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梅雨どきだから「あじさい橋」を聴こう

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城之内早苗1986年のデビュー曲「あじさい橋」。いい曲なんですよねえ。これをわれらがわさみんこと岩佐美咲が歌っています。それがもう本当に沁みる出来で、なんともいえずすばらしいんですね。わさみんの「あじさい橋」は、2013年1月発売のセカンド・シングル「もしも私が空に住んでいたら」のカップリングとして収録・発売されたものです。

その後ライヴでは2017年7月のサード・コンサートで歌っているので、DVD にも収録されています。実を言いますとわさみんの、というより早苗のヴァージョンもなにもかもふくめ、「あじさい橋」という曲を意識するきっかけになったのが、そのサード・コンサート DVD で、こないだ先月わさみん DVD シリーズを書いたでしょう、そのとき聴きなおしてことだったんです。

それまでも聴いていたものだったのに、先月サード DVD をじっくり聴いて、その夜寝たら夢のなかにわさみんの「あじさい橋」が出てきたんですね。目が覚めてそれを鮮明に憶えていたぼくは、あぁそんなにも「あじさい橋」が印象深かったのか、それほどと思っていなかったけど、きっとこの曲になにかあるんだよね、と思い至ったというわけです。

それで CD 収録のものを聴きかえしたり、早苗ヴァージョンもいくつか YouTube で聴いたりしていましたが、「あじさい橋」というのはもうなんといっても曲そのものがすばらしいですよね。本当にいい曲です。早苗が最初おニャン子クラブ時代に歌ったもので、作詞が秋元康ですから、秋元つながりということで AKB48時代のわさみんが歌うことになったんでしょうね。

秋元の書いた歌詞も絶品ですし、見岳章の曲もみごとですし、それにアレンジがですね、どなたがアレンジャーなのか早苗ヴァージョンはわからないんですけど(わさみんのは伊戸のりお)それもすばらしく、三位一体で非の打ちどころのない名曲になっています。あとは歌手のヴォーカルだけですが、早苗のオリジナル・シングルだとちょっと物足りないなという気がしないでもないです。

早苗の「あじさい橋」も、おニャン子解散後のソロ演歌歌手時代のものにはすばらしいものが多くあります。といってもぼくは YouTube でちょちょっと聴いただけですけど、なかなかオォ!と思わせる歌唱もありますね。たとえば、この令和ヴァージョンと銘打っているもの(2019)は伴奏アレンジも刷新されているし、歌も円熟の境地、しっとり落ち着いたフィーリングで、実にいいですね。

坂本冬美と共演したこういうヴァージョンも見つかりました。冬美のことをぼくはたいへんに高く評価しているわけですけど、早苗の歌とならぶと違いが鮮明になりますね。ふわっとやわらかく、やや線が細い早苗にくらべ、冬美の声には強さと張りがあります。この曲の歌詞の扱いかたは早苗のやりかたのほうが好きですが。

こういうのに比べたらわさみんは25歳とまだ若く、しかもその「あじさい橋」は CD か DVDでしか聴けないのでご紹介することができません。それでも言えることは、早苗の若いころと比較していまのわさみんのヴォーカルはすでに完成されているということですね。特に2017年のライヴ・ヴァージョン「あじさい橋」について言えることなんですが、声に丸みと艶が出てきていて、それでも若干キンと耳につく感じも残ってはいますが、キュートでかわいらしい声質を維持しつつ落ち着いたフィーリングを獲得、たいへんに好感の持てるものです。

特にグッと来るのはサビに入っての「渡れる、渡れない」部分ですね。ここで(早苗のでもそうですが)ぼくは感極まってしまうんです。歌詞とメロがいいからという、つまりそういうつくりの曲だからという、そういうことなんですけど、わさみんのことばの乗せかたも絶妙にすんばらしいですね。そのままサビを歌って「あじさいばし〜〜」に至るあたり、なんど聴いてもため息が出ます。その「渡れる、渡れない」のサビ部分に入ると、俄然リズムが跳ねはじめシンコペイションが効くようになるのも好物です。

こんなにもすばらしい曲である「あじさい橋」。YouTube でどう探しても城之内早苗ヴァージョンしか見つからず、ほかにはぼくにとって至高である岩佐美咲ヴァージョンしかないなんて、不思議です。こんな名曲なのにねえ。たぶん見つからないだけで、演歌歌手のみなさんはライヴなどでは歌っていらっしゃるのでしょう。CD や DVD にも収録されているかもしれません、いやきっとそうでしょう。

(written 2020.6.12)

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