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ときにはシャーデーを

(3 min read)

Sade / The Best of Sade

ときおり無性に聴きたくなるシャーデー。Sade は本当はシャーデイだけど、今日は日本で流通しているシャーデー表記でいきますね。女性歌手個人のことだと勘違いされることもありますが、シャーデーというのはバンドの名前ですよね。1980年代後半から90年代前半にかけてだったかな FM ラジオや MTV でもとてもよく聴いて、その都会的なサウンドのファンにぼくもなって、いちおう一枚だけ CD を買いました。それが94年の『ザ・ベスト・オヴ・シャーデー』。いまだにこれしか持っていません。

ジャジー・ポップなサウンドも心地いいんですけど、個人的に感じるシャーデーの魅力は曲のよさですね。たとえば「ハング・オン・トゥ・ユア・ラヴ」でも「スムース・オペレイター」でも「パラダイス」でも「ナシング・キャン・カム・ビトゥウィーン・アス」でも「ザ・スウィーテスト・タブー」でも「キス・オヴ・ライフ」でも、ビートの効いたノリのいい曲調にスムースなサウンド・メイクやメロディ・ラインがよく似合っているなと思います。

ぼくにとってのシャーデーの魅力はこういったビートの効いた曲の数々にあって、しかも主役歌手の歌うちょっぴりエキゾティックで影のあるメロディも大好きでした。バンドでのリズムやサウンドのつくりかたも実にうまいなと、いま聴きなおすと思いますが、当時はなにもわからずただカッコイイ、都会的に洗練されていてオシャレだといった程度に思っていたんですよね。1980年代後半ごろあたりからの UK ジャズとその周辺が好きだったみなさんならシャーデーは好物だったんじゃないでしょうか。

そのころのああいった UK ジャズとかクラブ関連の音楽の動き、そう、たとえばこのシャーデーもそうですし、Us 3もそうかな、ソウル II ソウルなんかもぼくのなかでは同じような、が言いすぎならちょっと似ているというか関係あるように思えていたんですけど、もうホントどれもこれも好きでした。同じお皿の上に並べて盛りつけてぼくは聴いていたんですよね。シャーデーはたぶんこれ生演奏ビートですよね(人力演奏ドラマーがゲストで参加しているはず)、だからその点ではちょっと違うかもなんですけど。

反復の多いちょっぴりメカニカルだけどニュアンスのあるビートとエキゾティックなサウンドの上に、シャーデー・アデュのセクシーでかすれたような陰なヴォーカルがふわっと乗っていたシャーデー。サックスのサウンドもムーディだったし、いまのシャーデーのことはなにも知らないんですけど、当時東京に住んでいたぼくは、都会の夜景がよく似合うキャッチーでオシャレな音楽として20世紀のあいだは愛聴していました。

アルバム『ザ・ベスト・オヴ・シャーデー』には、ベターデイズもカヴァーしたパーシー・メイフィールドの「プリーズ・センド・ミー・サムワン・トゥ・ラヴ」が収録されていますが(映画『フィラデルフィア』のサウンドトラックからで、オリジナル・アルバムには未収録)、どうってことない出来のよう思います。やはりこのバンドは魅惑的なオリジナル・ソングのほうがいいですね。

(written 2020.3.8)

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