
フローラ・プリムのニュー・アルバムは圧巻の傑作
(3 min read)
Flora Purim / If You Will
フローラ・プリム15年ぶりの新作『If You Will』(2022)がかなりいいですよね。傑作じゃないかな。キャリアと高齢なりに枯れている・円熟しているということがなく、みずみずしいピチピチした新鮮な魅力にあふれているっていう。もうビックリですよ。
基調になっているのはリオ・サンバをベースにしたブラリジアン・ジャズ・フュージョン。ジョージ・デュークと共作した過去曲の1「If You Will」からそれが全開のダンス・チューンで、腰が動きます。しっかしあまりにも声が若いなあ信じられんと思ったら、メイン・ヴォーカルは子のダイアナか。
だれが歌うにせよ、ここにはフローラが1970年代から展開してきたサンバ・ジャズ・フュージョンがしっかりと刻印されていて、しかもそれが2022年型にアップデートされているコンテンポラリーネスも聴きとれるのはやはりすばらしい現役感。この手のダンス・ミュージックは古くならないっていうのがあるにせよ。
2曲目「This Is Me」からはフローラがメイン・ヴォーカルですが、ダイアナの若々しさに負けていないフレッシュな躍動感があって、80歳にして衰えるっていうことと無縁なんですね、このひとは。音楽的にはまったく老化していません。
この2曲目は先行シングルだったもので、やはりこのアルバムに全面参加しているパートナー、アイアート・モレイラのジャム・バンドを現代にアップデートしたもの。ブラジリアン・フュージョンですけれど、快活でダンサブルな、本アルバムの白眉といえる一曲(私見)。楽しいぃ〜っ!
英語で歌うリターン・トゥ・フォーエヴァー時代の3「500 Miles High」はやはりジャジーに。エレベ・ソロも聴きどころのひとつです。その後はふたたびサンバ・フュージョン路線で進みます。都会的洗練と野趣が絶妙なバランスで共存融和するサウンドは聴きごたえ満点。
8「Dois + Dois = Tres」だけがなぜかのブルーズ、それも1960年代末〜70年代初頭ふうにくっさ〜いどブルーズ・ロックなんですが、これはなんだろうなあ。エリック・クラプトンみたいなエレキ・ギター・ソロはだれが弾いているんでしょうね。これだけアルバムのなかで浮いています。
ラストの9「Lucidez」はナイロン弦アクースティック・ギターとフェンダー・ローズのサウンドが熱を冷やす静謐で美しいハーモニーを持つバラード。ちょっとジャジーなミナス音楽を想わせたりもしますね。フローラのヴォーカルもきわだって魅力的に響きます。
(written 2022.5.8)