ジャズ・コントラバス&ヴォーカルの新世代 〜 石川紅奈
石川紅奈
デビューして間もないジャズ・コントラバス&ヴォーカルの新人、石川紅奈(くれな)。話題になっていますよね。サブスクにはアルバム『Kurena』(2023)と若干のシングルがあります。後者にはアルバム未収録曲もあって聴き逃せません。
アルバムは前半1970年代初期リターン・トゥ・フォーエヴァーふうな感じではじまって、じっさい2曲目は「500 Miles High」ですし、あのころのチック・コリアあたりを意識したっぽい音づくりなのは小曽根真がプロデュースしているからでもあるんでしょう。ピアノも弾いていそうですね。
3曲目のスティーヴィ・ワンダー・チューンだってさわやかジャジーなレンディション。これもほかの曲でもコントラバスでショート・パッセージを反復しているのが軸になっているのはややフュージョン流儀っていうか新世代ジャズっぽさです。
そうしたスタイルがピッタリはまったのが5「Off The Wall」(マイケル・ジャクスン)。1979年の原曲からヒプノティックな反復リフが特徴でしたから。もちろん紅奈はそれをコントラバスで。しかもこの曲ではほかの楽器いっさいなしの弾き語りっていう。
アルバムはもう一曲あって終わりですが、個人的に紅奈の作品で最も惹かれたのはシングルでしか聴けない「No More Blues」(2022)です。いうまでもなくアントニオ・カルロス・ジョビン作「Chega de Saudade」の英語ヴァージョン。
紅奈はこれをコンガとコントラバスのデュオ(+かすかなデジタル・ビート)でやっていて、やっぱり反復リフを軸に、とってもグルーヴィで気持ちいいんですよね。ボサ・ノーヴァっていうより完璧にジャズ。後半ではスキャットとコントラバスのユニゾン・デュオによるインプロ・ソロも聴けます。
(written 2023.4.12)