しんどいとき助けになる音楽(20)〜 ビリー・ホリデイ
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Billie Holiday / Solitude
ヴァーヴ系時代はあまり評価の高くないビリー・ホリデイですが、いいものはあります。なかでもいちばん好きなのが『ソリチュード』(1956)。声のあばれなくなったビリーがひたすら淡々と世界をつづっていて、いまのぼくなら共感できます。
ギター、ピアノ、ベース、ドラムスのリズムを軸にトランペットとサックスが一本づつくわわるというジャズ・バンドの伴奏。いかにもヴァーヴらしいコンサバ・サウンドですが、ヴォーカルのバックとしては好適なんですね。
ビリーの声と歌いかたは、ある種「老熟」の境地といっていい味を聴かせていて、たしかに1930年代のような覇気はないものの、元気が失せたのがかえって歌にちょうどいい落ち着きをもたらす結果になっているなと、いまのぼくには聴こえます。
特に好きなのが1「East of the Sun」、2「Blue Moon」、7「I Only Have Eyes For You」、8「Solitude」、10「Love for Sale」、11「Moonglow」あたり。なかには快活なナンバーもありますが、基本おだやかじゃないですか。速めテンポな曲でもケバ立つところがなく、すべてを悟ったかのような微笑みを感じます。
この後、二度目のコロンビア時代となるともっと枯れて、まるでおばあちゃんみたいな声なんですが(まだ40代なのに)、そこまで行く前段階のヴァーヴ系時代のやわらかなビリーを、ぼくはかなり愛しています。
(written 2023.9.2)
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