わさみんはオリジナル曲がとてもいい
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2017年2月にわさみんこと岩佐美咲にはじめて出会って以後しばらくは、カヴァー・ソングのことばかり書いていたような気がします。考えてみたらそれは曲を知っているということだけが理由でした。それまで聴いたことのない歌手でしたから、考察するにあたりせめて曲だけは知っているものをとっかかりにしないとやりにくいっていう、たぶんそれだけでしたよね。オリジナル曲をすっ飛ばしてカヴァー曲ばかり聴いていたような気がします。
それがどうでしょう、いまではどう聴いたってオリジナル・ソングのほうが好きだし、すばらしく聴こえるんですからね。わさみんは(も)カヴァー・ソングより彼女のために用意されたオリジナル曲のほうが歌がすばらしく聴こえます。そこで、いままでに発売されているわさみんオリジナルをいちおう下に列挙しておくことにします。デビュー曲の「無人駅」が2012年リリース。その後一年一曲のペースで発売されています。
1 無人駅
2 もしも私が空に住んでいたら
3 鞆の浦慕情
4 初酒
5 ごめんね東京
6 鯖街道
7 佐渡の鬼太鼓
8 恋の終わり三軒茶屋
9 右手と左手のブルース
こういったオリジナル曲のほうが(カヴァー曲より)いいぞと感じるのには、たぶん大きな理由が二つあると思うんです。(1)わざわざわさみんのためにと、彼女が歌うためにと、あつらえられた曲であるということ。(2)くりかえしくりかえし、特に歌唱イベントなど生歌現場で、なんども聴いてきていること。これらが最大の理由なんじゃないかと思えます。
カヴァー曲のばあい、優秀な名曲であればだれが歌ってもいい感じに仕上がるだけの柔軟性、解釈可能性、幅の広さを持っていると思うんですけれども、それでも最初もともとはだれか特定の歌手のためにと考えられて用意された曲です。その歌手の持ち味にぴったりフィットするようにとあれこれ工夫されているものですよね。だからほかの歌手がカヴァーする際にはその曲のよさを100%発揮しきれないケースもあるかもしれないです。
つまり、オリジナル曲ならばその歌手向けにとつくられた、いわばオーダー・メイドな歌なわけですから、似合うというのはある意味当然ですよね。わさみんのばあいだって、たとえば「もしも私が空に住んでいたら」とか「鞆の浦慕情」とか「初酒」とか「鯖街道」とか、こういった曲以上にわさみんに似合う曲って、いままでのカヴァー・ソングのなかにないようにに思いますからね。
言ってみればオートクチュール(注文を受けてつくる仕立て服)とプレタポルテ(できあがったのを売っている既製服)との違いといいますか、岩佐美咲という歌手の寸法からなにからぜんぶしっかり測って100%フィットするように一針一針ていねいにつくられたのがオリジナル曲ですから。そんなわけでオリジナル曲を歌うときのわさみんのほうがカヴァー曲を歌うときより輝いているように思える、曲が似合っているように思えるんですよね。
現場で、CD で、くりかえしいままで聴いてきているからというのももちろん大きな理由です。わさみん CD 収録曲全体数の78からすれば、オリジナル曲はたったの9ですから、少ないんですけど、ぼくがいつも聴いている私製わさみんベスト・プレイリストではその九曲がまとめてトップに来るように並べてありますからね。聴くたびにまずそのオリジナルの九曲が来るというわけですよ。
それに歌唱イベントなどでも、たとえば通常四曲のところ、1曲目と4曲目がオリジナル・ソングで構成されています。なかでもラスト4曲目はその年の新曲を例外なく持ってくることになっていて、2019年にあんなにたくさん参加したわさみん歌唱イベントで2019年の新曲「恋の終わり三軒茶屋」はこれでもかというほど聴きました。現場で30回以上は聴いたんじゃないかなあ。
そのほか「無人駅」〜「佐渡の鬼太鼓」までも歌唱イベント現場でなんども聴きました。「佐渡の鬼太鼓」はそれでも回数が少なかったんですけど、それ以前の六曲は刷り込むようになんども聴きましたよね。どんな曲でもなんどもなんども聴けばいい曲だと思えてくるというのは事実です。なかでも「初酒」と「鯖街道」はテンポがよくてイベント幕開けにぴったりということで多く歌われますので、ぼくのなかにも沁みついているし、佳曲だと思えるようになっています。
その点、2020年の最新曲「右手と左手のブルース」だけがですね、う〜ん、まだ一度も生歌唱を聴いていません。しょうがないんですよね、発売されたのが4月22日で、ちょうどコロナ禍のまっただなか。わさみんイベントも二月末からずっと自粛でおやすみ中で、現在も再開されておりません。事実、わさみんはまだ一度もこの新曲をファンの前で歌ってないんですね。
ソロ歌手として独立してからは、年間100回以上の歌唱イベントをこなしてきているわさみん。一度の歌唱イベントで必ず一回その年の新曲を歌いますから、つまりそれだけ歌い込んでいるわけです。ところがそれが「右手と左手のブルース」のばあい、いまだ皆無ということで、ぼくらファンとしてもさびしいかぎり。早く生歌イベントが再開して(っていつのことになるのか?)、なかなかの曲であると思う「右手と左手のブルース」も、現場で生で、どんどん聴きたいものです。
(written 2020.6.13)