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フレンチ・レトロ・ポップス 〜 ララ・ルイーズ

(3 min read)

Lara Louise / Alone Together

本人公式サイトで売っているのもこれ一つなのでデビュー作じゃないかと思うララ・ルイーズの『アローン・トゥゲザー』(2022)は、レトロなフレンチ・ジャズ・ポップスみたいな感じ。ララはオランダ出身ですけどね。

こういうのは正直言ってオジサン・キラーみたいなもんで、ぼくなんかそこにまんまとハマっているわけです。一部を除き基本的にカヴァー集ですから、ほとんどの曲はみなさんどこかで耳にしたことがあるだろうというそういうデジャ・ヴをふわっと軽く骨のない感じでやっているんです。

パッとしない曲もあるものの、個人的になかなかいいと思うのが3「Jardin d’hiver」、5「Golden Earrings」、8「Besame Mucho」、9「Petite Fleur」あたり。これらの有名スタンダードは曲がもともと魅力的なので、それでもって勝負しているんでしょうね。1「Alone Together」もいいな。

このへんの哀感情緒感とちょっぴりのラテン香味がとってもいい味つけになっている古い曲を、2020年代的コンテンポラリーな解釈なんかちっともまじえず、っていうかそもそもレトロ指向こそ現代の(新しい流行りの)ものだからそのほうがある意味コンテンポラリーだっていうか、そんな音楽ですよね。

USやUKじゃもうすっかり一大潮流になっているそんなレトロ・ポップス指向、フランス、いやオランダ人だけどやっているのはフレンチ・ポップスですからララは、そんな世界でも流れができつつあるのかも。

くわえてあんがいいけると思うのがピンク・フロイドの13「Set the Controls for the Heart of the Sun」。オリジナルがどんなだったか忘れましたが、ここではウードなど活用してちょっぴりマグレブ音楽ふうなニュアンスを出しているのがグッド。

それはそうと5「ゴールデン・イアリングズ」は、サブスクだとララ本人の曲とクレジットされていますが、とんでもない。ぼくらジャズ・ファンは、レイ・ブライアントも1957年のプレスティジ作『レイ・ブライアント・トリオ』でやった、有名ポップ・ソングと知っています。

サブスク・サービスの問題というより、データを提供する音楽家やレコード会社側がテキトーいいかげんにやっているというのが原因でしょう。以前はアレックス・アクーニャの新作で「マーシー、マーシー、マーシー」も「ワン・フィンガー・スナップ」もコンポーザー名記載欄が空白でしたし、枚挙にいとまがないです。

いまだサブスクなんてそんな扱いで、ディスクを買わずサブスクで聴く人間のことは正直軽視されているということなんですが、ちゃんとした仕事をしてほしいとレーベル・サイドに強く望みたいです。

(written 2023.1.19)

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