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オールディーズへの眼差し 〜 パール・チャールズ

(3 min read)

Pearl Charles / Magic Mirror

萩原健太さんにご紹介いただきました。

パール・チャールズは米ロス・アンジェルスのシンガー・ソングライター。カントリー・ポップとかコズミック・カントリー界の人物といままで評されてきたみたいですけど、新作『マジック・ミラー』(2021)はちょっと違いますよね。

それは1曲目を聴いただけでもわかります。いきなりもろABBAっぽいディスコ調ですから。この曲は完璧なるレトロ・ディスコ・ムード炸裂で、これ、どうしたんでしょうねえ。でもこういったのはアルバム中これだけで、ほかにディスコっぽいものはありません。でもカントリー色だって大幅に後退していて、もっとこう、ちょっとソウルフルな味がにじみ出るマイルドなポップ・チューンがずらり。

パール自身が書いている曲のメロディ・ラインがかなりヴィンテージ風味というか、1960年代後半〜70年代前半あたりの、AMソフト・ロックっぽい感触を強く匂わせているあたりに、ぼくみたいなオールド・ポップス・ファンは惹かれるところなんですね。

そのへん、実はディスコ・ナンバーである1曲目でもにじみ出ていて、特にサビの、半音階で動くラインなんかは完璧ヴィンテージ・ポップス調で、ニヤリとします。なんだかどこかで聴いたことあるぞっていう既視感を強くただよわせながら、オジサンの心をつかんでしまいます。こんなひとだっけなあ、パール・チャールズって。

7曲目「オール・ザ・ウェイ」なんかも、完璧オールディーズ路線炸裂。なんですか、このAメロの動きかたは。若手シンガー・ソングライターが2021年に発表した新曲だとは到底思えないレトロさ加減じゃないですか。言い換えれば古くさい。この7曲目はそれだけじゃなくて、全体的に中高年にはグッとくるタイプの曲です。

9「スウィート・サンシャイン・ワイン」だってそうだし(曲題がそもそもねえ)、アルバム全体にオールディーズへのしっかりした眼差しがあって、それでもやっぱりスライド・ギターが聴こえるカントリーっぽい曲もあるんですけど、新しくリリースされるポップ・ミュージックが自分にはシックリこなくなったなぁ〜とお嘆きの中高年音楽リスナーにはピッタリですよ。

こういったヴィンテージ風味というかレトロ・ポップス・テイストが2020年代のひとつの流れなのか、それとも健太さん自身がそういった年齢と趣味だから見つけてくるのがうまいだけなのかは、ぼくにはわかりません。

(written 2021.3.10)

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