聴きやすくわかりやすい 〜 オルジナリウスのホワイト・アルバム
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Ordinarius / Blanc
ブラジルのヴォーカル・コーラス・グループ、オルジナリウスの新作『Blanc』(2022)がリリースされましたね。渋谷エル・スールでは前々作の『Paralelas』(2020)が今年の最新入荷みたいになっていますが、その後2021年にも一作ありました。
このアルバム題とジャケット・デザインをあわせ見ると、やはりどうしてもビートルズの(通称)『ホワイト・アルバム』(1968)を連想するわけですけど、オルジナリウスの今作はアルジール・ブランキ(Aldir Blanc)曲集という意味です。
それでもこういうジャケット・デザインにしたんだから「白」というのにもひっかけたのではありましょう。プリンスにも(通称)『ザ・ブラック・アルバム』(1994)という真っ黒ジャケがあったし、ビートルズのあれはなにかとオマージュを産んだ名作です。
オルジナリウスの『ブランキ』収録の12曲はすべてアルジール・ブランキの書いたもの。ブラジルの国民的詩人とまで言われたアルジールは2020年5月に新型コロナウィルス感染症で亡くなっているので、追悼の意味を込めたトリビュート・アルバムをつくったんでしょう。
このコーラス・グループの音楽性は、ぼくも松山公演に行った2019年秋冬の来日ツアーあたりから三作、微動だにしておらず、いい意味でのマンネリというか金太郎飴状態。不動のエンタメ・ミュージックなんですよね。
ここまで続けて同じことを徹底的に練りこめば、もうこれは立派なアート(職人芸=芸術)と言えるし、こういったうきうき楽しい音楽を待ち望むファンにきっちり結果を聴かせてくれているというホンモノのプロだけがなせるワザだということです。
しかし前もオルジナリウス関連で言いましたが、楽器演奏にしろヴォーカル・コーラスの重ねかたにしろ、めっちゃ高度に洗練された複雑な技巧を駆使してつくりこまれています。ちょっと聴いてもただ楽しいだけの軽い音楽に思えたりするかもしれませんが、そういうできあがりになる、聴きやすくわかりやすいっていうのが真のすばらしさです。
『ブランキ』でも約43分間がただひたすら楽しくてあっという間に終わってしまいますし、アルジール・ブランキというソングライターと書いた曲の魅力を最大限に発揮できているし、アミルトン・ジ・オランダ、トリオ・ジューリオなど多彩なゲスト参加もオルジナリウスのエンタメ性にまるで同化されています。
(written 2022.3.29)
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