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レトロ・ポップなチャーミングさを増したノナリアの最新作
(4 min read)
NonaRia / Sampul Surat Nonaria (Sebuah Persembahan Untuk Ismail Marsuki)
おしゃれで趣味のいいインドネシアのレトロ・ポップ三人組ノナリア(NonaRia)。昨2020年の12月に新作を出していますねえ。見つけたのは今年に入ってからだったんですけど、いまのところまったくどなたも話題にしていないのは、CDがまだ日本に入ってきていないからでしょう。ノナリアに興味を示す層はフィジカル派ですから。
しかしこの2020年新作『Sampul Surat Nonaria』、日本でも一部で話題になった2017年のデビュー作『NonaRia』以上に愉快なできばえで、快作なんですよね。CDがないっていうたったそれだけのことで話題にすらしないのは、かなりもったいなさすぎるっていう、そんなみごとなアルバムなんですね。
だから、CDもエル・スール原田さんにお願いしてはありますが、いつごろ入荷するのか?入手できるのか?そもそもフィジカル・リリースされているのか?といったあたりがわかりませんがゆえ、もうきょうぼくはとりあげて書いちゃうことにします。
ノナリアの一作目は、スネア・ドラム(&ヴォーカル)、ヴァイオリン、アコーディオンのトリオ編成だったわけですが、今作ではアコーディオン奏者がピアノに持ち替え(+ベーシストも参加)。アコはまったく使われていません。がしかし音楽の傾向はまったく同一。SP時代の古き良きジャジーなポップスを現代にそのままよみがえらせたという路線で、あいかわらずのレトロ志向なんですね。
まるで1920〜40年代のジャジー・ポップス、スウィング・ジャズ、ラグタイムをそのままベースにしたような、そんなレトロ・ミュージックを、趣味よく、洗練された感覚でおしゃれ&チャーミングにかわいく、こなしてみせてくれているのがノナリア。そこにはのんびりのどかでおだやかなフィーリングが聴きとれるのもグッド。性急だったり激しかったりとんがっていたりなんてことは、1ミリたりともありません。
心がほっこりと温かくなるハッピーでノスタルジックなノナリアの音楽は、インドネシアの国際都市ジャカルタにおけるジャズ歌謡センスがいまに生き続けていることを実感させるもので、SP時代のヴィンテージなジャズ・ポップスが大好きなぼくなんかにはこれ以上ない心地よさなんですよね。
2020年の新作では17年のデビュー作で聴けたそんな音楽性をそのまま持続し、さらに一歩洗練の度を増したといった趣きですかね。アコーディオンの代わりにピアノを使ってあることでジャズ風味が強くなり、(ちょっとのイモくささも魅力だった一作目よりも)都会的におしゃれなフィーリングを獲得したかなという感じ。でも決してクールにならないのがノナリアらしさです。
軽いラテンなアクセントが聴かれるのもこの二作目の特色。特に7曲目と10曲目。まろやかなラテン・リズムがノナリアのこのかわいらしさをいっそう強調することになっていて、そう、世界中のポピュラー・ミュージック全般にラテン・リズムは影響をおよぼしていますが、そんな一端をここでも垣間見ることができて、胸がなごみます。
フィジカルはまだ入手できないけれど、Spotifyアプリの画面でジャケット・カヴァーを見れば一作目同様のチャーミングさ。国際郵便の封筒を模したデザインに、NonaRiaのバンド名が書かれてあるのは右上に貼られている切手部分。一作目ではミニ・ポスト・カードが封入されていましたが、今作も同様の趣向が凝らされているかも。
(written 2021.4.9)