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ムード重視雰囲気一発 〜 メロディ・ガルドー

(4 min read)

Melody Gardot / Sunset In The Blue

萩原健太さんのブログで知りました。

メロディー・ガルドー五年ぶりのスタジオ・アルバム『サンセット・イン・ザ・ブルー』(2020)は、ラリー・クラインのプロデュースのもと、リズム・セクションにくわえるにヴィンス・メンドーサのアレンジしたオーケストラ演奏といった内容。

とりあげている曲はジャズ歌手がよくやるスタンダードと今回のためのオリジナルがまざっていて、ジャジーなスタンダード・ナンバーのほうがぼくみたいな嗜好の持ち主にはグッとくるところなんですけれども、オリジナル・ナンバーでみせる軽いクロスオーヴァー風味もなかなかのものです。

今回のこの新作では、音楽的に軽いジャズ・ボッサ・テイストを効かせているというのがちょっとしたテーマになっていて、そこはかとなくただよう感じではありますが、全編を貫く一種のテーマみたいになっています。そんなところも好みです。

1曲目はなんでもないバラードですけど、2曲目「セ・マニフィーク」からボッサ風味が効きはじめます。いいですねえこれ。しかも管弦のオーケストラ伴奏がこれまた絶妙。繊細で瀟洒。(アルバム全編で)管楽器の高音域アンサンブル・アレンジにはちょっとギル・エヴァンズのペンを想わせるところもあります。

この「セ・マニフィーク」には男性歌手がゲスト参加してデュオで歌っているんですが、それがなんとファドのアントニオ・ザンブージョなんですね。どういう縁でしょうか。アントニオといえば、以前書いた新世代ファド歌手サラ・コレイアのアルバムにゲスト参加していたのも印象に残っています。このガルドーの「セ・マニフィーク」ではアントニオも軽いフィーリングでふわっと歌っていますよね。

3曲目「ゼアズ・ウェア・ヒー・リヴズ・イン・ミー」も軽いボッサ・リズムがいい感じ。アルバムではこの後もこんな感じの曲が多く並んでいます。ガルドーは基本ジャズ・ルーツの歌手でしょうし、ジャズ&ボッサが好みだっていうような、日本にも確実にかなりな数存在するそんなライト・テイストな音楽リスナー向けにはもってこいのアルバムじゃないでしょうかね。

そんななか、ちょっとしたアクセントになっているのが7曲目「ウン・ベイジョ」と8「ニンゲン、ニンゲン」。特に8曲目のほうですね、このちょっとサンバっぽい快活な強めのビート感で走るこの感じ、ふわっとしたこのアルバムのなかではやや異質ですけど、ぼくの嗜好からすればストライクどまんなかです。やっぱりジャジーではあるんですけどね。音量は小さめだけどパーカッション群も活躍しています。

終盤は「ムーン・リヴァー」「アイ・フォール・イン・ラヴ・トゥー・イージリー」という二大スタンダードで締めくくり。やっぱりアクがないっていうか、悪く言えば手ごたえのまったくない歌と演奏ですけど、こういう音楽は雰囲気一発、なんとなくのムードにひたるっていうのが楽しみかたですよ。

(written 2020.12.9)

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