ゾクゾクするほどスリリング 〜 ウェザー・リポート「ブルー・サウンド・ノート・3」
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Weather Report / Domino Theory
ジャコ・パストーリアス、ピーター・アースキンが辞め、ヴィクター・ベイリー、オマー・ハキムの新リズム・セクションになったウェザー・リポートの第一作『プロセッション』(1983)は、おそろしくつまんないアルバムでした。
ジャコとピーターが辞めたのはこれに先立って『スイングジャーナル』誌で(ジョー・ザヴィヌルの独占告白として)読んでいて、さてどうなんのかな?と期待&不安の入り混じるなかリリースされたニュー・アルバムを待ちきれない思いで勇んで買って聴いたのに、レコードかけながら「ナンダヨコレ?」と思わず声が出ちゃっていたかも。
それくらい退屈きわまりなかったんですが、この印象はその後もずっと変わらず、現在まで40年間あきらめず折に触れて気をとりなおしては聴くんですが、いまだにどうにもおもしろくない作品だとしか思えないです。
ところがその次の『ドミノ・セオリー』(84)は、まるで一躍突然変異を起こしたかのように(ぼくには)楽しくて、そもそも出だしでドギモを抜かれたというか、1曲目「キャン・イット・ビー・ダン」はジャズでもフュージョンでもない(当時でいう)ブラック・コンテンポラリー。
それが超カッコよかった。マイルズ・デイヴィスも誉めたこの曲がいまでも大好きだっていうのは以前も詳述しましたので。それのオープニングでシンセサイザーの(ズーンと来たあと)ぴろぴろり〜んっていうアルペジオが鳴るんですけど、実はB面2曲目「ブルー・サウンド・ノート・3」でも同じのが使われていて、アルバムの通奏音のようになっているんですね。テーマ・サウンドっていうか。
B2「ブルー・サウンド・ノート・3」はかなりドラマティックに展開するジョーのオリジナル・ナンバー。後半部で大胆な転調が二回、いずれも関係ないキーへ飛び、曲調もテンポも一瞬でがらりとチェンジするっていう、その瞬間のスリルがたまらないんです。
そこまでの前半部はかなり不穏でダークなムード。そのパートが淡々と長いからこそ転調での早変わりが生きるんです。これもやはりウェイン・ショーターのテナー・サックスをほぼ全面的にフィーチャーしていて、転調による急激で大幅な変化もいとわずスムース&カラフルに吹きまくる様子に感心します。
アルバム冒頭の「キャン・イット・ビー・ダン」はあまりにくりかえし聴いてきたせいもあるのか、いまの気分だと「ブルー・サウンド・ノート・3」こそ本作の白眉、クライマックスに聴こえないでもなく。実は近年忘れていましたが、ウェインが亡くなってこのバンドを全面的に聴きかえし、ゾクゾクする魅力を再発見しました。
(written 2023.3.10)