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いまは『サム・ガールズ』が心地いい 〜 ローリング・ストーンズ

(3 min read)

The Rolling Stones / Some Girls

ローリング・ストーンズの諸作中、このところ(最近一、二年?)の気分では『サム・ガールズ』(1978)がいちばん好きになってきています。個人的No.1ストーンズは長年『エクサイル・オン・メイン・ストリート』(72)とその近辺だったのにねえ。

サイズのコンパクトさといい、トンがっていない内容の中庸さ加減といい、ちょうどいい聴きやすさなんですよ。これ以上でも以下でも、老齢の入口にさしかかりつつあるいまのぼくの気分にはフィットせず、その中間のちょうどよいバランスの上でこのアルバムは成立しているように思えます。

ですからディスコとかハードなロックンロールとかはイマイチで、いまのぼくが好きな『サム・ガールズ』とは「ジャスト・マイ・イマジネイション」といったソウル・カヴァーと、カーティス・メイフィールドっぽい「ビースト・オヴ・バーデン」、そしてなによりおだやかなカントリー・ソングである「ファー・アウェイ・アイズ」あたり。

特にレコードではB面1曲目だった「ファー・アウェイ・アイズ」が最高に心地いいです。淡々としたアクースティック・ギターのカッティングとピアノと、絶妙にからみあうペダル・スティールで表現するベイカーズフィールド・サウンドに乗せミックがトーキング・ヴォーカルを聴かせています。決してシャウトしたりギターが派手に鳴ったりしないっていう、この平穏さ。

テンプテイションズ・ナンバーだった「ジャスト・マイ・イマジネイション」もオリジナルの「ビースト・オヴ・バーデン」も、激しくなくザラついていないのがいいと思うんですよね。基本的にアメリカ黒人音楽に沿いながら、適度にそれを希釈しているその加減が、いまの気分にはぴったりなんです。

アルバム・ラストの「シャタード」だって、ノリのいいグルーヴ・ナンバーではありますが、ファンキーさのなかにユーモアがあって中庸な雰囲気を感じますから、けっこう好き。空間をビッチリ音で敷き詰めすぎないのがいいので、ロックンロール・ナンバーだけど「ビフォー・ゼイ・メイク・ミー・ラン」(ヴォーカルはキース)も好き。このスカスカ骸骨サウンドが<やりすぎない>感を出しています。

なんだかんだ言ってスキップしたりせず通してぜんぶ聴くんですけど、アルバム・サイズも全10曲約40分という適切さ。むかしのLPレコードってどれもだいたいこんなもんでしたけど、2020年代の新作アルバム短尺化傾向にも合致しています。

そして、いくら書いても説明しきれない<なにか>の心地よさ、快適さがこのアルバムにはあります。トンがっていない、時代の先鋭流行を追いすぎない、ちょっと立ち止まっていったんのんびり休憩しているみたいな、そんなのどかなリラックス・ムードがいまは好きなんですよね。

(written 2022.1.14)

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