しんどいとき助けになる音楽(4)〜 ニック・ケイヴ「レット・イット・ビー」を溺愛している
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Nick Cave / Let It Be
映画『アイ・アム・サム』のサウンドトラック・アルバム末尾に入っているニック・ケイヴの「レット・イット・ビー」がたまらなく大好き。ビートルズ・ナンバーをとりあげたアルバム全体はともかく、ラストのこれだけ溺愛しています。
映画のことも忘れちゃったし、ニック・ケイヴという音楽家のこともべつにそんなねえ。でもこの「レット・イット・ビー」はこの曲の最高の解釈になったんじゃないか、ぼくの聴いたなかではビートルズやポール・マッカートニーも入れてのベスト・ヴァージョン in the wroldだと言いたいぐらい。
ニックはメロディの起伏を極力なくし、平坦に歌っています。もともとアリーサ・フランクリンのために書かれたというゴスペル風味も消し、ただひたすら黄昏の諦観を淡々とつづることに専念していて、それは伴奏サウンドのかなりあっさりしたシンプルさについてもいえることです。
そうすることで、この曲の歌詞の意味をいっそう深くえぐりだし、人間性の究極の闇をくっきりと描き出しているんですよね。この曲はこう歌うのがいい、曲の意味を表現するにはこんなのがふさわしいという、ベストなレンディションになったと確信するゆえんです。
(written 2023.8.14)