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どうってことないけど、くつろげる(3)〜 スタンリー・タレンタイン
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Stanley Turrentine / Never Let Me Go
以前言いましたがリズム&ブルーズにも片足つっこんでいた泥くさい持ち味のジャズ・テナー・サックス奏者、スタンリー・タレンタインが好き。また一つ『Never Let Me Go』(1963)というアルバムのことを書いておきましょう。
私生活でも当時のパートナーだったシャーリー・スコットがオルガンを弾いていて、+ベース+ドラムス+コンガという四人編成。コンガはこのころブルー・ノートでよく起用されていたレイ・バレット。その後ファニア・オール・スターズで活躍しましたね。
オルガン+コンガ入りでもさほどアクや泥くささは強くなく、都会的洗練のほうを感じるおとなしめの音楽。それでもテナーの音色やフレイジングなんかはけっこうファンキーですから、マイルドだと感じるのはシャーリーのオルガン・サウンドが一因かもしれません。
テンポよく快調に幕開けし、2曲目はビリー・ホリデイの原曲を活かすようにしっとりと。ぼくの最大のお気に入りは3「Sara’s Dance」。トミー・タレンタインの曲となっていますが、ここではラテン・リズムが使われていて、かなりファンキー。こうなるとコンガが効きます。
アルバム後半もシャーリーのリリカルなプレイが光る6「Never Let Me Go」なんか絶品バラードですよね。切ないメロディをスタンリーもるるとつづっていていい味です。アルバム題になっているだけに、これを聴かせたい、出来がいいという判断なんでしょう。
ラストのスタンダード8「They Can’t Take That Away from Me」もグッドな内容。テーマ演奏部のリズム面でちょっとした工夫があるのもポイントです。そういえばこのアルバム、どんな有名曲もひねりが効いていてストレートにはやらないっていう。
こうしたべつにどうってことない凡作、というと語弊があるでしょうがそこらへんにいくらでもころがっているようなフツーの作品を楽しめると、音楽ライフに深みとひろがりが出ます。
(written 2023.4.17)