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グアドループ出身、エルマン・サンビン

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Véro Hermann Sambin / Sky Loom

この歌手、いまはフランスで活動しているんですかね、(ヴェロニーク・)エルマン・サンビン(Véro Hermann Sambin)。グアドループ出身とのことです。その2020年作『Sky Loom』がなかなかのお気に入りになりました。ジャズ・ヴォーカル・アルバムと呼んでいいと思うんですけど、カリブ的といえる要素、特にリズムにそれがあって、聴いていて楽しいです。

まず1曲目「Lanmou the Entertainer」から曲に独特のリズムがありますよね。グアドループの音楽をなにも知らないので、これが同島由来かどうかいえないんですけど、聴いて気分が浮き立つカリビアン・グルーヴだなとはわかると思うんです。ピアノ+エレベ+ドラムスでつくりだすこのサウンドもいいですし、中盤部でエルマンがスキャットでピアノとかけあいをやるあたりは本当に極上です。そこからそのままピアノ・ソロ(グレゴリー・プリヴァ)、それもいいです。ギターも聴こえはじめます。

このアルバムの伴奏は、基本、ギター、ピアノ、ベース、ドラムスだと思うんですが、曲によってはホーン奏者がくわわっているものもあります。あまり聴こえないけどパーカッショニストもいるかも。とにかく演奏は地道というか堅実で、派手に目立つようなことはありません。エルマンの書いた曲とヴォーカルを主役に、どこまでももりたてていこうといった感じですね。しかもなんだかオーガニックなテクスチャーもありますね。

2曲目以後、しっとりした歌謡系というか、シャンソン的というかモルナ的というか、そういった曲ではカリビアン・リズムの楽しさを味わうことはできないですけど、エルマンの書いたメロディの美しさとしっとり情緒、ヴォーカルの味をしみこませるように楽しむといった、そんな聴きかたができますね。でもどことなくリズムのニュアンスにカリビアン・テイストをかすかに感じないでもないです。

1曲目とならぶアルバム前半部のクライマックスは、たぶん5曲目の「Sourie」ですね。ハンド・クラップが効果的に使われていて、そのリズムがいいんですよね。曲じたいはしっとりシャンソンみたいですが、この曲には鮮明なグルーヴがあります。ギターだけで歌うんですけど、そのギター伴奏もなかなか聴かせますね。だれが弾いているんでしょうか。あ、ラルフ・ラヴィタルですか。

ひきずるような重たい感じのビートを聴かせる(特にエレベが)7曲目「Wonderfil」もノリがいいですが、ここでのコーラス・ハーモニーはエルマンの多重録音かもしれません。後半は特にキメも入っていい感じですが、続く8曲目「Douwé」後半がとってもいいんです。ドラマー(アルノー・ドルマン)がスネアをメインにかなり激しい叩きかたをしていて、曲の前半部はやっぱりしっとりバラードみたいだからな〜と思っていたら、後半は様相一変、リズミカルになるんですね。この曲後半部はかなり聴けますね。

アルバム後半は全体的にカリビアン・リズムでぐいぐい攻めるといった趣で、本当に聴き惚れます。10曲目「Volonté」からそうですが、本番はたぶん11曲目「Sky Loom」からです。この11曲目中盤ではエレベ・ソロが出るんですけど、それがもうなんともいえずいいノリで、曲のビートもいいし、このアルバム・タイトル曲にはグルーヴがありますね。いやあ、みごと。

12曲目「Foufou」と13曲目「Foufou frange」はメドレーになっていて、これは同じひとつづきの曲ということなんでしょう。ややキューバン・ボレーロっぽい感触も聴きとれますし、同時にピアノなんかは部分的にサルサっぽくなったり、それでも全体的にはグアドループっぽいリズム・ニュアンスが聴きとれて、実にいいですね。

そして14曲目「Léjé」。これがこのエルマンのアルバムで(1曲目とならぶ)ぼくの最大のお気に入り。続くアルバム・ラストの15曲目はエピローグ的なインストルメンタルなので、本編はこの14曲目で終わりです。ビートが効いているのがいいし、快活で楽しくて、グルーヴはカリビアンだし、もう文句なしですね。伴奏のリズム・セクションも一体となって激しくもりあげてくれるのが最高です。

(written 2020.4.1)

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