8.14 生わさみんはすべてを超えた 〜 岩佐美咲ファーストストリーミングライブ~離れていても繋がっている~
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最後にわさみんこと岩佐美咲に会ったのは、昨2019年12月初旬の広島シリーズ二日間でのことでした。二日目のラストで美咲と握手してしゃべったとき「今年はこれで最後になると思う、また来年会いましょう」と言って、実際来年またすぐ会えると思って軽い気持ちで別れちゃったんですけど、その結果がこれですよ。コロナや、すべてはコロナが悪いんや。
コロナ禍ゆえ、美咲の歌唱イベントも二月下旬ごろから中止になりはじめ、三月に入ったら予定が完全白紙状態になって、そのままなにもなしで八月まできているわけですよ。その間、実際に客と対面してのリアル・イベントができないんだから、早くネット配信ライヴをやるべきだと、ぼくも三月ごろから(美咲所属の)長良プロダクションと徳間ジャパンにも直接言い続けてきました。
がしかし、これがいつまで経っても実現せず。ほかの事務所やレコード会社の歌手のみなさんがどんどん配信ライヴをやっているというのに、いったい長良+徳間はなにをやっとるんや?!と、憤りすら感じていましたね。大幅に遅れること七月になって、8月14日に美咲の有料ストリーミング・ライヴを開催するとの告知があって、あぁようやくだと、しかし飛び上がるほどうれしかったですね。美咲の(ネット越しとはいえ)ナマ歌を聴けるのは超ひさびさなわけですから。
それで、きのう8/14、20時から『岩佐美咲ファーストストリーミングライブ~離れていても繋がっている~』が eplus の Streaming+ で配信されたというわけです。時間ピッタリにはじまって、21時15分ごろまで。予定では一時間程度とのことでしたが、1時間15分になりましたね。チケットを購入したかたは、アーカイヴで17日深夜までなんどでもくりかえし楽しめます。
歌われた曲目は以下のとおり。
1 無人駅
2 元気を出して
3 ふたりの海物語
4 年下の男の子
5 虹をわたって
6 初酒
7 千本桜
8 魂のルフラン
9 マリーゴールド(ギター弾き語り)
10 365日の紙飛行機(ギター弾き語り)
11 右手と左手のブルース
美咲のネット・ライヴは初めてということで、制作側、美咲ともにまだ慣れていない面もあるというか、ぼくからしたらやや不満に感じる点もありましたので、そこからまずメモしておきたいと思います。
・60分はちょっと短い、90分ほしかった
・設定で最大にしても音量がやや小さい
・しゃべりすぎ
・無観客なのに、どうしてカメラが三台しかないのか
・やや暗かった照明の問題
・総花的になったかも
60分という短めの時間尺しかないんですから、あまりしゃべりすぎずポンポン次々と歌ってほしいというのが個人的な願望で、11曲というのは事前の予想どおりですが、あんなに曲間でしゃべらなければさらに数曲歌えたはずです。美咲は歌手なんですからね。二時間くらいあるふだんのリアル・コンサートなどではいいでしょうが、いままで半年以上もまったくファンの前で歌っていなかったんですから、なによりもまず第一に(しゃべりよりも)歌を!もっと聴きたかったですね。
カメラ台数の不足もちょっぴり不可解でした。無観客なんですから、カメラはもっとたくさん用意してさまざまなアングルから多様な美咲の姿を撮影できたはずです。会場や音楽家や予算の規模の違いもあって比較はできませんが、サザンオールスターズの配信ライヴでは40台のカメラが使われたんですよね。それが昨夜の美咲ネット・ライヴでは、正面、斜め左、右横と三つしかありませんでしたので、一時間にわたってほぼ同じような三種類の絵を見続けることとなりました。
照明もやや暗かったというか、もっと派手な明るめのライティングの演出を考えたらよかったんじゃないかと思いましたが、それ以上に、たった一時間ほどのライヴであれもこれも詰め込もうとした結果(その気持ちはよくわかるんですが)、総花的になってしまって要点がしぼられなかった点はイマイチだったかもしれません。その象徴がギター弾き語り。出来はよかったんですが、限られた時間枠内でさまざまな姿を見せよう聴かせようとしたから、全体的に焦点がボケたかもしれません。歌唱一本でやったほうが内容は整理されたんじゃないでしょうか。弾き語りはそれに専念したネット・ライヴをまた開催するとか、方法はあります。
さてさて、ここまで不満に感じた点を書いてきましたが、しかしなんといってもぼくらファンにとってはナマわさみん不足、わさみんロス状態がずっと続いていましたので、ネット越しであるとはいえ、ライヴ・コンサートを観られた聴けたというのは大きな幸せでありました。日常のつらく苦しい、しんどい気持ちのすべてを吹き飛ばす、すべてを超えていくパワーが美咲のネット・ライヴにはありました。ようやく生わさみんが帰ってきた!というヨロコビで胸がいっぱいでしたね。ぼくなんかちょっと泣いちゃったもんね。
きのうのネット・ライヴで歌われた美咲の持ち歌は、結局「無人駅」「初酒」「右手と左手のブルース」と三曲だけでしたが、そのうちデビュー・シングル「無人駅」でライヴをはじめたのは、最初意外に感じました。「初酒」か「鯖街道」が常道どおり来るんじゃないかと踏んでいましたからね。でもこれは最も回数多く歌い込んできている曲を、慣れない無観客ライヴのオープニングに持ってきて、歌手の緊張をほぐそうという制作側の意図だったのでしょう。歌の出来も無難だったと思います。
続けて最新シングル「右手と左手のブルース」のカップリングから二曲「元気を出して」「ふたりの海物語」。この二曲は、この日のコンサートで(弾き語りパートとあわせ)いちばん内容がよかったかもと思うほど上出来でしたね。特に竹内まりやが書いた「元気を出して」は印象に残りました。その晩の夢のなかにまで出てきましたからね。ぼくは前から言っていますが、美咲は(演歌というより)こういったライト・タッチの歌謡曲テイストがよく似合うんです。
でも「ふたりの海物語」もよかったですよ。これは4月22日に発売されただけということで、ライヴで歌うのは美咲自身はじめてだったと思いますが、ど演歌というか、このブログでも以前指摘したように演歌そのものというより演歌カリカチュアなんですね。反面、その意味では演歌とはなにか、どういうのが演歌なのか、といった特徴をギュッと凝縮したような一曲ですから、演歌というジャンルを味わいたいときにはもってこいなんですね。こなれた歌唱だったなと感じました。
「年下の男の子」「虹をわたって」はいままでに歌唱イベントでたくさん歌ってきているものですから、新曲シングルのカップリングであるとはいえ、ぼくも生わさみんで聴き慣れているし、だからわざわざ貴重なネット・ライヴで選ぶ必然性があったのかな?と思います。続く「初酒」は順当な選曲で(なんといっても代表曲です)、しかも今年のこのコロナ禍で苦しむぼくたちの心境をなぐさめてくれるような歌詞と曲調なので、これはよかったですね。
次いで歌われた二曲「千本桜」「魂のルフラン」にはちょっと驚きました。無観客のネット配信ライヴでこれをやるのかと。オタク観客いてこそ映えるレパートリーであるとも言えるわけで、このへんはやっぱりセット・リストにヴァラエティを持たせようとした制作側の意図がみえますね。「千本桜」ではライティングとカメラ・ワークもかなり凝ったものを披露して映像をつくっていましたからね。
ギター弾き語りの二曲「マリーゴールド」(あいみょん)「365日の紙飛行機」(AKB48)は、ギターよりも歌の出来がすばらしかったと感じました。逆にいえばギター演奏面では、おそらく緊張ゆえか、左手の押弦が若干曖昧になってしまう瞬間もありましたが、歌唱はみごとでしたね。弾き語りは演奏に気を取られて歌が淡白になってしまうということは、美咲にはあてはまりません。
そもそも美咲の歌唱法がどういったものなのか、ちょっと考えてみてください。素直というか歌のメロディをそのままストレートに、ナイーヴ&ナチュラルに、スッとスムースに歌う、ことさら特別な技巧を凝らさない、といったものじゃないですか。あっさりクールなフィーリングというか、だから歌オンリーのときも弾き語りのときも、差が生じないんですよね。いい曲はそのままきれいなメロディのまま率直に発声する美咲であればこそ、弾き語りでも歌一本のときとそのまま同じように歌いこなせるんです。
きのうのギター弾き語り、上のほうではセット・リストが総花的になってしまった最大の原因であるようなことを言いましたが、「マリーゴールド」と「365日の紙飛行機」の出来そのものはすばらしかったんです。特に歌がですね、よかったと思います。後者は昨今のコロナ情勢下で沁みる内容の歌詞を持っていることもあり、本当にグッときましたね。
ラストに最新曲「右手と左手のブルース」を持ってきたのは、おそらく全員の予想どおりだったでしょう。なにしろこの曲の CD 発売が4月22日というコロナ禍まっただなかだったということで、ファンの前、観客の前で披露することができないまま現在まで来ていました。どんな振り付けで、どんな様子で、(生歌だと)どんな歌唱法で、歌うのか、ほとんどわからないままでしたから、やはりこのラスト・ナンバーがいちばん感銘深いものでしたね。
歌唱そのものは、この「右手と左手のブルース」、いままでのシングル表題曲のようにキャンペーンで毎週末どんどん歌い、回数をこなし、熟練の度を上げていくということができていませんから、きのうのネット・ライヴ時点ではいまだイマイチと感じざるをえない面もありました。がしかしまずは一回聴けた、観られたというだけでぼくらはじゅうぶん満足なんですね。
美咲ストリーミング・ライヴ、まだ一度目です。歌手も制作側も、そしてぼくら視聴者側も慣れていなかったかもしれません。それでもいくつかの不満を払拭するだけの魅力を美咲が歌う姿と歌唱は放っていたんじゃないかと、そう思いますね。ほぼ成功だったと言えるでしょうから、二度目、三度目を期待したいですし、実際、あるでしょう。
(written 2020.8.15)