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美しい、あまりにも美しい、レイヴェイのアンプラグド弾き語り 〜『ザ・レイキャヴィク・セッションズ』

(4 min read)

Laufey / The Reykjavík Sessions

数日前にリリースされたばかり『ザ・レイキャヴィク・セッションズ』(2022)っていうのは、たぶん今夏レイヴェイ(米LA在住)は故郷アイスランドの首都にちょっと帰っていたんですよね。デビュー・アルバムが出た八月あたり。そのときホーム・セッションみたいにピアノやギターで自分の曲を弾き語り録音したんでしょう。

この22分ほどのニューEPがですね、も〜うホント、いままでのレイヴェイの全音源、といってもちょっとしかないんだけどまだ、のなかでも最高にぼく好みでアット・ホームなファミリアー&ロンリネス感で、こんなにもすてきな音楽、この世のどこにもなかった、いままでの人生で出会ったなかでNo.1じゃないのか、といまは言いたい。

収録の全六曲はいずれも過去に発表済みレパートリーのセルフ・カヴァー。でも既発ヴァージョンよりここでのソロ・アクースティック弾き語りのほうがはるかにいいと思えます。お得意のDAWアプリは使っておらず、生演唱ワン・テイクでの収録で、そもそもアナログ感の強い音楽家だったしはじめから。

個人的には、ギターもの(2、3、4)も抜群だけどクラシカルなピアノもの(1、5、6)がよりすばらしいと感じます。そしてどれもまさにこう解釈されるために生まれてきたっていう曲本来の姿をしていて、ここに「決定版レイヴェイ」みたいなものができあがっちゃったなあとの感を強くします。

サウンドがナマナマしく、まるで同じ部屋のなかで仲のいい親友に聴かせるようにそっとソフトにつつましくやっているような、そんな音響も最高にすばらしい。息づかいまで手にとるようにわかる極上音質なのが、そうでなくたってインティミットなレイヴェイの音楽性をいっそうきわだたせています。

どんな細部までもフェザーでデリケートな配慮と神経が行き届いていて、声の出しかたもそうならピアノ鍵盤やギター弦に触れる指先の動きの微細な隅々にいたるまでコントロールしているレイヴェイの、さらりとナチュラル&ナイーヴにやっているようでいながら実は高い技巧に裏打ちされたミュージシャンシップも伝わってきます。

それなのに緊張感が張り詰めたようではなく、故郷でくつろいでイージー&カジュアルにさらりあっさりとやってみただけっていうようなムード満点なのが、っていうか実際そうだったんだろうし、それがかえってこの音楽家の真価を表現しているよう。

ラフ・スケッチなのにつくりこんだようにていねいで、臆病だけど大胆だっていう、そんな相反する二重要素が同居している『ザ・レイキャヴィク・セッションズ』、アンプラグドなピアノ or ギターのライヴ弾き語りというフォーマットが、もとからいいレイヴェイの曲の美しさを極上シルクのような肌あたりにまで高めていると聴こえます。

いまはもうこれだけあれば生きていけるんじゃないか、なんだったら聴きながら死んでもいいっていうほど、好き。

(written 2022.9.25)

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