イタリア発、グルーヴ・オンリーのクラブ・ジャズ 〜 ジェラルド・フリジーナ
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Gerardo Frisina / Moving Ahead
イタリアのクラブ・ジャズ界の大物、ジェラルド・フリジーナの新作『ムーヴィング・アヘッド』(2020)が出たので聴きましたが、やはり今回もなかなかいいですよね。クラブ・ジャズということで、グルーヴ一発、踊れるようにっていう、それだけにフォーカスしたような音楽です。
くわしいパーソネルとか録音情報がわからないんですけど、グルーヴ・タイプはあきらかにアフロ・ラテンですよね、この音楽。アフロ寄りかな。じっとすわって聴き込むような音楽じゃなくて、フロアでダンスするためのものですから、延々と一種類のビート感が続くのも特徴です。だから対面して聴き込んでいると同じような曲がずっと並んでいるので飽きちゃうかも。
ってことで、部屋のなかにすわっているときでも、トラックリストを眺めながら真剣に耳を傾けるというよりも、ながら聴き、なにかをしながらBGM的に流す、というのに向いているアルバムだなと思います。グルーヴィさは極上ですから、気分はいいです。ちょうど1990年代的なアシッド・ジャズな感覚にも満ちていますよね。
このアフロ・ラテンなグルーヴ、たぶんこれ聴いた感じ、バンドの生演奏で実現しているんですよね、きっと。そう聴こえます。基調はあくまでドラムスとパーカッションの打楽器群。それが大きくバーンとフィーチャーされていて、そこに各種楽器音がちりばめられているといった配色でしょうか。
ちょっと異色なのはコラです。だれが弾いているのか、西アフリカのこの弦楽器、でもエキゾティックな雰囲気はまるでありません。あくまでジャズ・ファンクというか西洋ふうクラブ・ジャズのなかの一要素としてコラの音が混ぜ込まれているだけなんですけど、それでもオッと耳を惹きますよね。新鮮でさわやか。
多くの曲でアフロなグルーヴが実現しているなか、そのなかにいろんな打楽器で3・2クラーベのパターンも演奏され同居していて、このアルバム、一時間以上も、ただひたすらこのノリのいいグルーヴに身を委ねているだけで快感だといえる、そんな音楽ですよね。理屈抜きに楽しいです。
(written 2020.10.27)