新傾向と旧傾向が入り混じる令和時代のSpotify演歌プレイリスト
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v.a. / Enka Now:令和時代の演歌
九月中旬ごろだっけな、公開されたSpotiy公式プレイリスト『Enka Now:令和時代の演歌』。これ、しかし内容が日々変わりすぎだと思いますねえ。選曲・曲順ともに数日おきにコロコロ入れ替わり、これじゃあねえ、ゆっくり安心して楽しめませんよ>Spotify Japanさん。
ともあれ、このプレイリストはいまの時代の新演歌みたいなものを集めたものと考えていいんでしょうか。とはいえ、じっくり観察していると、要するに元号が令和になってからリリースされた曲ばかりを収録しているというだけのコンセプトみたいで、必ずしも演歌の新傾向みたいなものを追いかけているというわけでもなさそうです。
演歌の世界は、むかしもいまもあまり変わっていないんだなあというのを実感する面もある『演歌Now』プレイリスト、なかにはこんなにも旧弊なというか古くさ〜い、オールド・ファッションドな演歌もいまだ発売されているんですねえ。ぼくがこどものころ、つまり1960〜70年代にテレビの歌番組で聴いていたようなのと寸分違わない曲だって多いです。
しかし、なかにはですね、特に若手演歌歌手の曲や歌いかたのなかには新時代を感じるものもあり。こってり濃厚で劇的なヴォーカル・スタイルではなく、もっとあっさりさっぱりした、ストレート歌唱法をとっている歌手も大勢います。
どんな歌を与えられているか?にもだいぶ左右されるんだなと実感したりして。旧世代の演歌歌手でも、新しいタイプの曲をもらえばそれなりの歌をみせているし、新世代演歌歌手でも、古い感じのステレオタイプな曲をもらって古くさいヴォーカルを披露していたり。
それでも、数十年前の演歌全盛期に比較すれば、かなり傾向が変わってきているんだなということが、このプレイリストを聴けばわかります。松原健之らの「風のブーケ」とか、おかゆの「星旅」とか、石原詢子の「ただそばにいてくれて」とか、はやぶさ&辰巳ゆうとの「サンキュ!ピース」とか、こういったものはちょっと前まで演歌フィールドで聴けるとは思えなかったものです。特におかゆの「星旅」はいいね。
かんたんに言えば、新世代にとって、演歌/歌謡曲/J-POPの境界線なんか(もともとないものだけど)とっくに消し飛んでいるということで、いまの時代の斬新な内容の歌を与えられた新世代歌唱法の演歌歌手たちが、一定の傾向というかしっかりした存在感を発揮するようになっているなということです。
ぼくの応援している演歌第七世代の岩佐美咲も中澤卓也も収録されていないのはちょっと残念なんでけれども、それでもそういった若手世代の歌手たちの一定傾向をこのプレイリストで聴きとることができるでしょう。
そのいっぽうで、ここ三年ほどのあいだにリリースされたものとは到底思えない演歌もたくさんあって、徐々に刷新されつつはあるけれど、演歌界はいつまでも変わらぬ世界が支配するものなのかもなあとは思います。それはそれでいいんじゃないでしょうか。Spotifyで音楽を楽しむような世代がどれだけ旧弊演歌に共感するのかは不明ですが。
(written 2021.10.2)
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