アメリカン・ポピュラー・ ミュージックの王道 〜 ファントム・ブルーズ・バンド
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Phantom Blues Band / Still Cookin’
Astralさんに教えてもらったファントム・ブルーズ・バンド。最初タジ・マハールのバックをつとめるべくマイク・フィニガン(key)を中心に集結した面々らしいですが、自身名義のアルバム最新作『スティル・クッキン』(2020)が痛快な時代錯誤感満載で、最高に楽しい。古いスタイルのファンキー・ブルーズ・ロック、ぼくはこういうのが気持ちいい人間なんです。
時代錯誤とか古いとかレトロとかっていうより、こういうのはアメリカン・ポピュラー・ ミュージックの王道として永遠不滅のものなんだろうというのがはっきり言って本音ですけどね。アップデート史観や進化論にとらわれすぎることなく今後とも聴いていきたいと思っております。
『スティル・クッキン』もサウンドの土台になっているのはリズム&ブルーズ、ジャズ、ソウル。そこに適度なカリビアン・ビート香味もまぶされているのはべつに意識したというんじゃなく、アメリカ合衆国音楽ではあたりまえの養分になっているものだから自然に出てくるわけです。
ウィルスン・ピケット・ナンバーの1曲目から快調。それ以後もドクター・ジョンふうのニュー・オーリンズ・スタイルが聴けるのがいいですね。鮮明なのは三曲あって2「ウィンギン・マイ・ウェイ」、3「ジャスト・イン・ケース」、7「ベター・バット・ナット・グッド」。ゆったりしたひょうひょうとした味わいがいいんです。
はっきりしたラテン・ソウル・ナンバーである8「テキーラ・コン・イェルバ」も最高だし、ブルージー&メロウにただよう都会の夜のくつろぎ感満載なスロー5「ブルーズ・ハウ・ゼイ・リンガー」ではジャジーでムーディなテナー・サックス・ソロも聴きどころ。背後でややハチロクっぽいビートの刻みがあったり。
完璧ジャンプ・ブルーズなバディ・ジョンスンの11「アイム・ジャスト・ユア・フール」なんか、こんな時代にまったくおじけづかずストレート真っ向勝負で博物館的なシャッフル8ビート・ブルーズをフル展開していて、こういうのがねえ、生理的快感なんですよね、ぼくはね。
(written 2022.5.15)