見出し画像

むしろシティ・スタイルが得意だったジョニー・シャインズ 〜 1973年ライヴ

(4 min read)

Johnny Shines / The Blues Came Falling Down - Live 1973

ブルーズ歌手/ギターリストのジョニー・シャインズ。2019年にリリースされたらしいライヴ・アルバム『ザ・ブルーズ・ケイム・フォーリング・ダウン - ライヴ 1973』がなかなかよかったので、ちょっと書いておきます。このアルバム、ネットで調べようとしても、くわしい情報が見つからないですねえ。

ジョニー・シャインズはロバート・ジョンスンゆかりの音楽家で、ジョンスン直系のスタイルを持つということで有名だったわけですが、ウリはあくまでデルタ・スタイルでした。しかしですね、いままでもくりかえし書いてきたのでくどいですがジョンスンの録音で聴けるデルタ・スタイルは、実はかなり少ないんです。

ジョンスンはたしかにミシシッピ・デルタ出身の音楽家ではありますが、アメリカ各地を旅して都会派のブルーズ・スタイルをも身につけた人物。世代からしても、リロイ・カーなどのシティ・ブルーズや、また特にブギ・ウギのパターンを演奏することに本領があったギターリストです。

もっと言えば、デルタ・スタイルとブギ・ウギほかシティ・スタイルの両方を共存させ、どっちも起用にこなしたのがロバート・ジョンスン。そして、ジョニー・シャインズは、といえば、実は同様にやはりどっちもうまくやれたというのが本当のところなんですよね。

シャインズというとデルタ・スタイルだ、というのは固定観念というか、そればかり求められたせいでその役割に自身が徹していただけにすぎません。特に1960年代のフォーク・ブルーズ・リバイバル以後はそれ一本槍だったとしてもいいくらいイメージが固定化されていました。

しかしシャインズは実はブギ・ウギなどのシティ・スタイルもこなせる、むしろそちらが本領の音楽家だった、というのがこのライヴ・アルバム『ザ・ブルーズ・ケイム・フォーリング・ダウン』を聴くとよくわかります。デルタ・カントリー・スタイルのものだってありますが、ロバート・ジョンスン直系のシティ・スタイルをたくさん披露しているでしょう。

たとえば、いきなりの出だし1曲目「ビッグ・ボーイ・ブギ」がブギ・ウギだし、その後も「カインド・ハーティッド・ウーマン」「スウィート・ホーム・シカゴ」というジョンスンのレパートリーのなかでも最も典型的なシティ・ブルーズをやっているじゃないですか。ギターでブギ・ウギのパターンを弾きながら。

そうかと思うと、11曲目、これもジョンスンの曲だった「ゼア・レッド・ホット」だってやっていますよ。これはデルタ・ブルーズでもシティ・ブルーズでもない、ジャジーなラグライムなんですよね。

こう見てくると、全編自分ひとりのギター弾き語りのみでやるこのライヴ、シャインズのヴァーサタイルさといいますか、やはり多彩で自在なスタイルの持ち主だった師匠ロバート・ジョンスンからそれらをぜんぶそっくりそのまま引き継いだんだなということがよくわかりますね。

シャインズ=デルタ・スタイル100%、っていう紋切り型はそろそろ消えてほしいなと思います。

(written 2021.3.28)

いいなと思ったら応援しよう!