むかしのコンパイラーたちはどうやっていたんだろう?
(4 min read)
きのう自家製コンピレイション作成歴のことをしゃべりましたけど、そういうプライヴェイトなものじゃなく、レコード会社から正式に発売されている編集盤というのがむかしからありましたよね、レコードでもCDでも。
パソコンが普及してしばらく経ってiTunesが登場してからは、コンピレイションというかミックス編纂はグッとラクになったよなあと思うんです。あっちこっちと持ってきたり並べ替えたりもドラッグ&ドロップだけできわめてイージーだし。
それになんといってもプレイバックがあまりにも容易です。自分で並べたものがちょっとどんな感じか、その場ですぐ試し聴きできるでしょ。この点、むかしのコンパイラーたちはどうしていたんだろう?っていつも思います。ちょっと試し聴きするといったってカンタンじゃなかったわけで。ほぼ不可能だったんじゃないですか、レコードしかなかった時代とかだと。
選曲したものをレコード会社にあるいはテープにとってもらって、それで試聴していたかもしれませんよね。レコードとかのテスト盤とかはいよいよ完成という段階にならないとプレスされないと思うので、やっぱりテープかな、それもカセットだったりオープン・リールだったりしたのかも。でも家庭用カセットの普及って1960年代半ば以後ですよねえ。
それに編纂段階の途中で随時プレイバックを参照しながら作業を進めるなんてことはまったくできなかったはず。だから選曲とか曲順の並び替えとかは、自分で考えてぜんぶ完成するまでは、発売済みのレコードをあっちこっちと聴きかえしたりしたんでしょうね。個人ユースのカセット・テープ・レコーダーの普及は1970年代以後だったでしょうからねえ。
こんな点でもいまはラクです。iTunesでもSpotifyでも、コンパイルしながらの作業途中段階で、ちょっといまどんな感じになっているかな?どう聴こえるかな?と思ったらそのままその場ですぐ試し聴けるわけですからね。それでイマイチな箇所も実にカンタンに発見できます。
音楽ですからね、いくら熟知しているといっても、新たな曲順になればやっぱり聴いてみないとどんな感じかわからないもの。このことをぼくはよく理解しています。だから、いまはSpotifyでどんどんミックスをつくっていますけど、やりなおしなんかもカンタンで、第一、廃棄しなくちゃいけない試作品CD-Rなんてものも出ないわけです、物体でやるわけじゃないから。
こうしてみてきても、フィジカルでやるしかなかった、それもテープ・レコーダーさえ高価で希少だった時代のむかしのコンパイラーたちは苦労しただろう、実に立派だったと感心します。もとの音源やレコードというものをほんとうによく知り抜いていたということに尽きますが、実際に並べて試し聴いてみないと実感がわかないぼくら素人とは才が違ったんでしょう。
そうやって苦労して(かどうかはよく知りませんが、話を聞いたこともないし)できあがった過去のコンピレイションはほんとうにおもしろく楽しくて、実にみごとなできばえだったものが多いです。コンピレイションやミックスづくりがはるかに容易になった現代のほうが、よりおもしろく楽しいものが登場するようになった、とは一概に言えないからおそろしいですね。
(written 2021.1.20)