エネルギッシュ&リリカル 〜 山中千尋
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山中千尋 / Today Is Another Day
なにかのプレイリストからどれか一曲流れてきて、オッいいじゃんとなって知ったジャズ・ピアニスト山中千尋の最新アルバム『Today Is Another Day』(2022)がなかなか聴ける充実の内容。
自作、カヴァー織りまぜての全編オーソドックスなピアノ・トリオ編成で、特に千尋の手になるオープニングのアルバム・タイトル曲はぼく好み。最初ゆったりおだやかに弾きはじめたなと思ったら、速攻トップ・ギアに入れて疾走します。そのまま最後までハードにグルーヴし、たまらない快感。
するといきなり2曲目がなぜかのラテン・スタンダード「Tres Parables」(オズバルド・ファレス)。個人的にはナット・キング・コールがスペイン語で歌ったラテン・ソング集でも楽しんできた好きな一曲で、このチョイスはうれしかった。いつくしむようにデリケートに鍵盤上を指が動くのが美しい。
ラテン・ナンバーとはいえませんが4「Old Days」は千尋オリジナルながらラテン・フィールを濃厚にただよわせた曲。これもサイコーだぁ。もちろんジャズの世界ではこういうのむかしから多いわけで、その伝統に沿っているということです。終盤はサルサふうになり。
7曲目もスペイン語題の「Ojos De Rojo」ですが、これはちっともラテンじゃなくシダー・ウォルトンの書いたジャズ・ナンバー。千尋の演奏は細やかに弾きながらもかなりグルーヴして、けっこういいと思います。ちょっぴりバド・パウエルっぽいような感じがします。
そのほかドライヴ・ナンバーはアルバムにいくつもあって、たとえば5「Midnight Mood」(ジョー・ザヴィヌル)なんかもそう。曲題に反し真夜中の静かな雰囲気じゃなくて、軽快で勢いよくどんどんあざやかに弾きこなす明るくスウィンギーな演奏です。
(written 2023.1.17)
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