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あなたのいる星の彼方へ 〜 タミ・ニールスン&ウィリー・ネルスン
(3 min read)
Tami Neilson, Willie Nelson / Beyond The Stars
カナダ出身ニュー・ジーランド在住の歌手、タミ・ニールスンのことはいままで二度書きましたが、どうもですね、ぼくはこのひとの声が好きみたいです。なんだか心地いい清涼感があって、それがマオリ的といえるものかどうかわからないけど、心惹かれてくりかえし聴いてしまうものがあります。
そんなタミの2022年新曲「ビヨンド・ザ・スターズ」がこないだ出たんですが、なんとウィリー・ネルスンとの共演。曲はタミの書いたもので、ウィリーが客演するかたちの、あくまでタミ主導の一曲。七月リリース予定のタミの新作アルバム『キングメイカー』に収録されるとのこと。
先行で「ビヨンド・ザ・スターズ」だけ発表されたわけですが、歌詞でおわかりのとおり、愛する人物と永遠に離れ離れになってしまった主人公の喪失感を歌ったモーンフルな一曲。具体的にタミは2015年にこの世を去った父のことを想いながら曲を書き歌ったようです。
そしてウィリー・ネルスンが当の父役として曲中に登場し話しかけるというドラマになっているんですね。実際、ウィリー1933年生まれ、タミ77年ですから、父子としての設定がちょうどいいくらいの年齢差。そのことと、同じカントリー畑の音楽家だということで、ウィリーに声がかかったのかもしれません。
追悼歌ではあるんですが、三拍子の曲をお聴きになれば、哀切で深刻な悲痛感みたいなものがほぼないさわやかな調子になっていることを感じることができるはず。これこそぼくがタミの曲や歌に惹かれている最大の理由で、南洋音楽的っていうか、「ビヨンド・ザ・スターズ」はアバネーラじゃないけれど、なんだかさざなみのような抗しがたいチャームがあると思うんですね。
タミはまずに亡くなった父のことを歌いましたが、そうと限定された歌詞や曲じゃありません。愛する大切なのにもう手の届かない星の彼方にあるもののことを想いながら、聴き手がそれぞれの事情を投影させて感情移入していける曲で、マオリ的、と言ってしまいますが、ただよう清涼な空気感で救われます。
(written 2022.5.9)