
ラウンジ・ジャズなバカラック 〜 カル・ジェイダー
(3 min read)
Cal Tjader / Sounds Out Burt Bacharach
いつだったかだいぶ前にSpotifyをぶらぶらしていて偶然見つけたカル・ジェイダーのバカラック曲集『サウンズ・アウト・バート・バカラック』(1968)。バカラックをとりあげるというのは、ラテン・ジャズ・ヴァイビストのカル・ジェイダーにしてはちょっとめずらしい企画ものじゃないでしょうか。
カル・ジェイダー好き、ヴァイブラフォン好きにして、大のバカラック・ファンなぼくですから、もちろん飛びついて聴いたんですけど、1968年というと、バカラックは新人ではないけれどまだキャリアの中期まっただなかといったあたりだったんじゃないかと思います。
たんにぼくが無知なだけだと思いますが、カルのこの『サウンズ・アウト・バート・バカラック』収録の全九曲のうち、半分くらいは知らない曲でしたからねえ。それでも聴けば聴いたで、あっ、やっぱりバカラックらしいなと感じることができるのはいかにも一流コンポーザーのあかしです。メロディの動きかた、コードの使いかたや流れに独特のものがあるんですよね。
知っている曲、なかでも好きな、たとえば7曲目「アイ・セイ・ア・リトル・プレイヤー」、8「ウォーク・オン・バイ」なんか、特に「ウォーク・オン・バイ」かな、好きでたまらないこういうおなじみの曲だと、そのメロディをカルがヴァイブで弾くというだけで心地よさにひたっていられます。う〜ん、やっぱりいいメロディだ、バカラック、好きだなあ。
このアルバムでのカルは、なんらのラテン・ジャズ色も出さず、ただ淡々とひたすらきれいにバカラック・メロディを奏でているだけで、アド・リブ・ソロすらあまりなく、メロを演奏するときのフェイクすらほとんどないくらい。バカラック・ソングみたいな美しいメロディは、やっぱりストレートにそのままやるのがいちばんですよね。
そんでもって、ラウンジ・ジャズふうっていうか、リラクシングなムードで心地よくくつろげる、そんな音楽ですね、このアルバム。聴き込むようなものじゃありません、ただ部屋のなかで、カフェで、BGMとして流していればそれでOK。ジャジーなインスルメンタルで展開したバカラック・カヴァー集としては、なかなかの好作品じゃないかと思います。
(written 2020.12.26)