ブルー・ノートのヒップ・ホップ・サンプル集 〜『ドロッピン・サイエンス』
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v.a. / Droppin’ Science
この『ドロッピン・サイエンス』(2008)っていうアルバムはいったいなんでしょうか。こないだSpotify徘徊で偶然に発見したんですけど、「Greatest Samples from the Blue Note Lab」と副題がありますので、ヒップ・ホップのサンプリング・ソースに着眼し、現在のクラブ・ジャズ・クラシックスな要素も入れた、ブルー・ノート・ジャズのコンピレイション、サンプラーということなんでしょうかね、たぶん。
といってもぼくはヒップ・ホップのことをなにもわかっていませんから、この『ドロッピン・サイエンス』を聴いても、だれのどれにサンプリングされているのだとかいったことはわからないんですね。ただたんにグルーヴィでダンサブルなファンキー・ジャズ・コンピレイションとして愛聴しています。
実際、ブルー・ノート・ジャズ、特に1960〜70年代のファンキーなやつはサンプリング・ネタの宝庫で、レーベル側としてもこんだけサンプリングされていますよ、という格好の元ネタ集としてコンピレイションでもリリースしてみれば、ヒップ・ホップ以後の世代の音楽ファンが往時のブルー・ノートのレコードを買ってくれるきっかけになるかもしれないと考えたんでしょう。
書きましたように、ぼくは日常的にはさほどヒップ・ホップを聴きませんから、アルバム『ドロッピン・サイエンス』に収録されている曲のどの部分がサンプルとしてだれのどれに抽出されループされているかみたいなことはわからないんですね。ひょっとして『ドロッピン・サイエンス』のレコードかCDといったフィジカルを買えば、そのへんの情報も書いてあるのかもしれないですけど。
でもちょこちょこと調べてみたら、ビースティ・ボーイズ、ア・トライブ・コールド・クエスト、Dr.ドレー、デ・ラ・ソウルといったトップ・ミュージシャンたちがブルー・ノートの楽曲をサンプリングしているらしく、う〜ん、そうなのか、ちょっとそんなヒップ・ホップ・ミュージックを聴いてみたいけど、どれを聴けばいいのかわかんないしなあ、どなたかおくわしいかた、コメント欄で教えてください。
ともかく、『ドロッピン・サイエンス』はヒップ・ホップを通過してジャズに興味を持つひとにとっては、聴きやすい入門的コンピレイションに違いありません。ヒップ・ホップはむかしのレコードからクールなビートや印象的なメロディを抽出しそれをループさせて新しいグルーヴをつくりだしますが、そういったサンプリングというヒップ・ホップが生み出した特有の手法によって、かえって過去の音源に注目が集まることもあるわけです。
実際『ドロッピン・サイエンス』は、これがヒップ・ホップ用のサンプル集であるという側面を抜きにして、これだけを聴いていてたいへん楽しいものですし、グルーヴィなジャズ楽曲が集められているし、サンプリングされるだけあってそれじたいカッコよく決まっているフレーズが散見され、ほんとうに気持ちいいですよね。
1990年代以後のDJたち御用達といった側面だけじゃなく、というかそうだったからこそ、もとの音楽じたいが聴いて楽しく、ダンサブルなグルーヴィさを持っているものばかりということですよね。ヒップ・ホップに無頓着な人間だって、グルーヴィでファンキーなジャズが好きならば、『ドロッピン・サイエンス』を聴いて、あっ、ここカッコイイぞ!と思える瞬間が続出です。
(written 2020.11.14)