ホントどっちがどっち?〜 ミカエル・シェレ&スコット・ハミルトン
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Michael Cheret Quartet Invite Scott Hamilton / French Song
このミカエル・シェレ・カルテット with スコット・ハミルトンの『French Song』(2022)がぼくのSpotifyアプリに登場したのは、長年看過してきたスコット・ハミルトンのことを最近見なおすようになり聴きはじめたからでしょう。たしかに新作だけど、注目を集めているとか大勢が聴いているとかじゃぜんぜんありませんから。
ミカエル・シェレっていうフランス人テナー・サックス奏者のことはまったく知りませんでした。スコット・ハミルトンが呼ばれこうして共演作をリリースしなかったら一生知ることもなかったんじゃないですかね。でも演奏がなかなかいいっていうかスコット・ハミルトンにそっくりすぎるっていうかそのフォロワーかもしれません、ここまで似ているというのは。
まるでコールマン・ホーキンスとベン・ウェブスターとチュー・ベリーを音だけで区別できないように(ウソ)、本作でのミカエルとスコットはここどっち?と判別できないんですよね。しかし、あっここで入れ替わったぞとわかるので、それなりの違いが聴こえてはいるんでしょう、でもどっちからどっちへなったのかはやっぱりわからず。
だからそういう聴き分けはあきらめて、二本のテナー・サックスがピアノ・トリオをバックにフランスの歌を抒情的につづるさまを漠然と楽しむっていうのがこのアルバムの聴きかたなんでしょうね。じっさいこのえもいわれぬかたちのない茫漠たる情緒感こそが命の音楽だと思えます。
ジャズだってもともとはそういうものだったのに、1940年代のビ・バップ革命以後かなり違う方向に進んでしまって、スコット・ハミルトンはデビューこそ遅かったものの、そうした失われた世界にあこがれて、それを表現せんと登場した才能でしたからね。あのころぼくはバカにしていましたけど、いまとなってはすばらしい表現力だと感嘆のため息ばかり。
本作もなにかこうぼくの琴線に触れてくる音楽で、こうしたしっとりした人間情緒をるるとつづるジャズはほんとうに心から好きだ、たまらない、なんどでもくりかえし聴きたいという気分になってしまいます。
ことに1、3、5、7曲目での湿ったエモーションなんか、もうほんとうになんといったらいいか。アルバム全編でテナー・サックスはつねに(入れ替わりながら)二本聴こえますが、ラストの7「Le Soir」でだけはどちらか片方だけみたい。最高のバラード吹奏なんですけど、ほんとどっち?
(written 2022.11.8)