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1960年代後半への郷愁 〜 エイドリアンズ

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The Adelians / The Adelians

1960年代モータウンみたいなポップなブラック・ミュージックだなっていうのは聴けばわかるけど、このエイドリアンズって何者なんでしょうか。ほとんど情報がなく、どこでアルバム『ジ・エイドリアンズ』(2017)を知ったのかも忘れたら確かめようがありません。メモしておけばよかった。

でもBandcampにページがありました。それによればカナダはモントリオールのバンドで七人編成。ヴォーカルがフロランス・ピタール。ほかギター、オルガン、ベース、ドラムス、サックス二本。『ジ・エイドリアンズ』が唯一の作品のようです。

バンドの演奏も歌手の歌いかたも荒削りで一本調子。どうってことない音楽なんですが、なんだか郷愁を強くかきたてられるものがあり、たぶんこれがシックスティーズへの視線を強く持ったレトロ・ソウルだからですよね。

といってもぼくは1960年代の洋楽でも邦楽でもほとんどリアルタイムで聴いていなくて、若干テレビの歌番組で触れていた日本の歌謡曲とか演歌とかそのへんだけなんです。当時のジャズやロックやモータウン・サウンドなんてもちろん知らず。

しかし当時から日本の歌番組で披露されるヒット曲がそんな洋楽の影響下にしっかりあって、その要素がかなり流入していたよなあと思います。でもこのことだってずっとあとになってからわかるようになったことですから。そうとも知らず知らずに体内に染み込んでいたにせよ。

エイドリアンズを聴いていると、まさに「あのころの」っていうことばがピッタリ似合うような音楽で、当時の洋楽なんかリアルタイムではなにも知らなかったぼくですらノスタルジアを感じてしまう、なんだかタイム・スリップしたみたいななつかしさがある、それもやや自覚的に、というのはやっぱり洋楽 in 邦楽をそれとなく感じていたんでしょう。

そんなエイドリアンズ、アルバムは音響まで1960年代ふうのサウンドに寄せたようなチープさ雑さで、これモノラルなんですよね。当時のカー・ラジオとかテレビ受像機の内蔵スピーカーとかから流れてきたらちょうどよく響くだろうっていうようなミックスで。

レイト60sヒット・チューンのカヴァーだって多少ふくまれているし、ぼくの世代だとちょうど小学生の時分にこんな空気感があったよなあ、それだから少年時代に戻ったような心地がするんだ、洗練されておらずおしゃれじゃないけれど、あのころのあの感じ、それが鼻の奥でツンと匂うみたいな。

エイドリアンズのバンド・メンバーがどのへんの年代でどういったひとたちなのか、どういった活動歴かなどは結局Bandcampにもどこにも情報がないんですけど、シックスティーズ・ソウルへのヴァーチャル・ノスタルジアを具現化している存在だっていうのは間違いないんじゃないでしょうか。

(written 2023.2.11)

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