ターキッシュ・サイケ・ジャズ・ファンク?〜 スヴェン・ワンダー
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Sven Wunder / Eastern Flowers
スヴェン・ワンダー(Sven Wunder)はスウェーデンの音楽家らしいんですけど、なにしろネットで調べてもほとんど情報がない謎の存在なんですよね。そのファースト・アルバム『イースタン・フラワーズ』(2020)のめくるめく世界に幻惑されてしまいました。
『Eastern Flowers』は、スヴェンが地元スウェーデンで2019年にひっそりとリリースしていたデビュー作『Doğu Çiçekleri』を、そのまま世界デビューさせたものだとのこと。
ヨーロッパから見たときのイースタンということですからもちろんアジア地域のことで、アルバム『イースタン・フラワーズ』には、ジャズ・ファンクやサイケ・ロックを媒介に、中近東・西アジア地域を思わせるメロディがちりばめられています。
ところで、ヨーロッパから見て東だからイーストとかオリエントになるというわけですが、日本からしたら西方なんで、だから前段でも西アジアと言いましたが、このへんは相対的な表現でしかないので、ぼくら日本人がかならずしもイーストとか東方、中近東と言わなくてもいいよなぁと思わないでもありません。地球をぐるっとまわれば西も東もないわけで。西側諸国という表現だって実はおかしいでしょう。
それはいいとして。使用楽器も、モダンなジャズやロックで使われるドラムス、ベース、ギター、キーボードを軸としながらも、そこにウード、サズ、シタールなど、アジア系の弦楽器を混ぜ込んで、しかもそれら弦楽器はすべて強く電化アンプリファイドしてあるという具合です。
メインはサズみたいですね。だいたいどの曲でも旋律を奏でるのがサズで、しかもエレキ・サズ。ここまで電化してエフェクトもかけちゃうと、はっきりいってエレキ・ギターと区別つかないよ、とちょっと聴いていて思ってしまいますが、じっくり耳を傾けると、独特のエキゾ風味を感じられるでしょう。
そう、エキゾ。このことばこそこのアルバムの音楽やスヴェンの姿勢を的確に表現したものでしょう。特に電化サズをメインに使っているということでトルコ方面のテイストを中軸として音楽を組み立てているのかなと思いますが、スウェーデン人が感じるちょっとしたエキゾティック・テイスト、異国情緒をそのまま具現化した音楽のように思います。
だから、言ってみればモンド・ミュージックの世界っていうか、インチキ・ワールド・ミュージックとでもいうか、トルコとか西アジア地域の音楽がなんとなく魅惑的だなぁ異だなぁってスヴェンも感じているんでしょう、そのエキゾ感覚をそのまま活かして作品化しているように思えますね。
だからあまりマジな気分で聴かなくてもいいですし、なんとなくBGM的に部屋のなかで流して、それでたぶんぼくら日本人が聴いても(西東が逆になるけど)エキゾティックだなと感じる要素満載ですから、それであぁおもしろい〜って、そんな軽い気分にひたっていればそれでOKっていう、そんな音楽じゃないでしょうかね。
世のなかには「辺境」「辺境音楽」とかっていうことばを好んで使うひとたちが一定数いますよね。そんなメンタリティをぼくは心底軽蔑していますけど、スヴェン・ワンダーのこの『イースタン・フラワーズ』なんかはまさにそんな辺境テイストに満ち満ちた音楽だなあ、そっち方面でもてはやされそうだなあって、そう思います。
(written 2020.11.30)
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