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しんどいとき助けになる音楽(6)〜 孙露
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孙露 / 十大华语金曲
遼寧省生まれの中国人歌手、孙露(すんるー)に出会ったのは2021年秋のこと。17年の『十大华语金曲』を知り、たちまち大好きに。もう一目惚れならぬ一聴惚れだったんですよね。瞬時に骨抜きにされちゃったなあ。
ちょうどおだやかで薄味淡白な音楽が大好きだと感じるように自分の嗜好が変化しつつあった時期の、ある種の衝撃ですらあって、愛聴作になった『十大华语金曲』はその後もくりかえし楽しんでいます。
中国語圏で古くから親しまれてきたスタンダードを13曲、ドラムス、ベース、ピアノ、ギターといったアクースティックでシンプルな伴奏陣を軸に、管楽器やチェロなどが控えめにいろどりを添える程度のきわめておだやかなオーガニック・サウンドで構成されている上を、孙露がどこまでもたおやかにやわらかく歌っています。
基本的にバラードやそれに近いゆったりしたテンポのものばかり。まるで静かに落ち着いて動かない凪の海を見ているような心地で、孙露の他作品も聴いてみれば、そもそもそうした資質の歌手なんだとわかります。中低域を中心に決してエモーションを荒立てることのない淡々としたヴォーカリストです。
なんの刺激もないみたいな世界ではありますが、極薄塩味が好みになってきたここ数年のぼくにはたいへん好ましく、ましてやいま心身がひどくつらい状況下ではこうしたおだやかな音楽こそが癒しなんですね。元気でハードでパンチのきいた音楽は傷をえぐられるような気持ちになってしまいますから。
すべてを癒す仏陀のような歌い声、それが孙露です。
(written 2023.8.15)