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台湾発、かすかにレトロな新世代R&B 〜 ジュリア・ウー
(3 min read)
Julia Wu / 2622
台湾的音楽のことをどんどん紹介している石井由紀子さんのnoteに出会ったきっかけは、ぼくがぞっこんのチェンチェン・ルー(魯千千、在NYCのブラック・ジャズ・ヴァイブラフォン奏者)について書いていたから。
それで石井さんをフォローするようになったんですが、昨年暮れごろ若手R&B歌手ジュリア・ウー(吳卓源)のことが紹介されてあったので、そのままアルバムをSpotifyでさがして聴き、うんこりゃいいねと納得しました。
中国は海南省生まれですが、すぐにオーストラリアへ家族で移住。米バークリー音楽大学を卒業し、2017年から台湾で活動しています。国籍はデビューのきっかけたるオーディションを受けたオーストラリアにあるみたい。日本人音楽家ともコラボ経験があるようですよ。
現時点での最新アルバム『2622』(2021)、ジャケットの感じはまるでロー・ファイ・ヒップ・ホップのそれですが、音楽的にはジュリアもまた新世代らしいエラ・メイとかH.E.R.などのオルタナティブR&Bの系列に連なる歌手に違いありません。
でも重く沈む感じはジュリアになく、ノリよく聴きやすいのが特徴で、さらにウィットニー・ヒューストンやマライア・キャリーといったクラシカルR&Bというか90年代フィールもかすかにあるのがぼく好み。特に『バタフライ』(97)あたりのマライアっぽいような。
アルバム『2622』は出だしからいいですが、特に好きだと感じるのは3曲目「paris」から。ミディアム・テンポのふわっとしたグルーヴがセクシーで、歌声もチャーミングだけど、なんたってトラック・メイクが最高ですよ。
そして4「better off without you」。これがぼく的には本アルバム中の白眉。台湾の人気ラッパー、瘦子E.SOとのコラボ・ナンバーで、パーティー・チューンふうなクラブ・ビート感が文句なしにカッコいい。90年代ふうのレトロなR&Bっぽいですが、確実に2021年のものといえる浮遊感もジュリアの発声にはあります。
感情の機微を表現するジュリアのデリケートなヴォーカル・マナーは、確実に21世紀的なソフィスティケイションに裏打ちされていて、たとえば8曲目「精神分裂」なんかを聴いても、新世代R&B歌手に違いないとわかるアンビエンスと重心の低さを持っているとわかります。
(written 2022.2.9)