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内に込め淡々と静かにゆらめく情熱 〜 ルエジ・ルナ
(2 min read)
Luedji Luna / Bom Mesmo É Estar Debaixo D’Água
アフロ・ブラジル文化が根づくバイーア州サルヴァドール出身のシンガー・ソングライター、ルエジ・ルナ。その最新作『Bom Mesmo É Estar Debaixo D’Água』 (2020)はブラジル黒人女性としてのアイデンティティを音楽に込めた、いはばブラジリアンBLMミュージックみたいなもんでしょう。
といっても高らかに宣言するような押し出しの強い躍動的な音楽ではなく、全体を支配するのは均衡のとれたおだやかな抑制の美学。もちろん曲によっては強いビートでがんがん攻めるようなものもあったりして(6「Recado)、そういうのがむかしから大好きなぼくですけど、ここでは全体的に静けさが目立っています。
ポエトリー・リーディングをまじえてニーナ・シモンをカヴァーした4曲目「Ain’t Got No」なんかにも象徴的に表現されていますが、黒人女性として生きるとはどういうことか、女性としての権利、ジェンダー平等という問題をじっくり見つめなおすようなおだやかな態度が音楽にも反映されていて、深い部分で怒りや抗議の意味を込めつつ表面的にはしずやかな音楽です。
プロデューサーがケニア人ギターリストのカト・チャンゲ。くわえてコンゴ系ブラジル人のフランソワ・ムレカ(ギター)、キューバ人のアニエル・ソメリアン(ベース)、バイーア出身のフジソン・ダニエル・ジ・サルヴァドール(パーカッション)など、マルチ・カルチュラルな面々で制作されたというのもいいですね。
アフロ・ブラジル〜ソウル~ジャズからクラシカルな室内楽までが自由な創造性で融合されたアレンジメントがすばらしいですし、ルーツ回帰と都会派な感覚が両立するいまのブラジル音楽シーンを代表する名作だと言えるでしょう。
(written 2022.3.9)