久保山 尚 🏴󠁧󠁢󠁳󠁣󠁴󠁿

スコットランドのグラスゴーというところに住んでいます。イギリス最大規模のビジネス利益団体で政策研究、ロビー活動の仕事をしています。以前は歴史の勉強をしていました。スコットランドの政治、経済、社会についてわかりやすく発信してきたいと思いますのでよろしくお願いします。

久保山 尚 🏴󠁧󠁢󠁳󠁣󠁴󠁿

スコットランドのグラスゴーというところに住んでいます。イギリス最大規模のビジネス利益団体で政策研究、ロビー活動の仕事をしています。以前は歴史の勉強をしていました。スコットランドの政治、経済、社会についてわかりやすく発信してきたいと思いますのでよろしくお願いします。

最近の記事

エリザベス女王の死はスコットランド独立を加速させるか

イギリス国王エリザベス二世が死去し、その葬列がスコットランドの首都エディンバラとイギリスの首都ロンドンで多くの群衆に見送られました。エディンバラでは群衆は沈黙し、葬列を静かに見届けました。イギリスの国旗ユニオン・ジャックはほとんど見られず、葬列の通ったロイヤル・マイルは厳粛な雰囲気に覆われていたのが印象的でした。 一方ロンドンでは多くのユニオン・ジャックが掲げられ、群衆も時折大きな歓声を上げて葬列を出迎えました。 この葬列への反応の違いは何を意味するのでしょうか。女王はま

    • 「人の街」グラスゴーが見せた気概

      昨日、スコットランドのグラスゴーで、インドから訪問していた2人の男性の滞在先にイギリス内務省移民管理局のワゴン車が現れ、この2人を強制的に拘留しました。すると移民管理局のワゴン車は瞬く間に近隣住民に囲まれ立往生。ワゴン車を囲む市民は百人を超え、警察が動員されワゴン車と市民の間に立ち、膠着状態になりました。 数時間の膠着状態の間、ワゴンを囲む市民は数百人に上り、地元議員や弁護士、そしてスコットランド政府の介入後、拘留された2人は解放されました。解放された2人を市民は大きな歓声

      • 議会選挙から透けて見えるスコットランドの「やさしさ」

        5月6日はスコットランド議会選挙でした。注目はSNPが過半数を獲得するかでしたが、結果は過半数に1議席足りない64議席に終わりました。しかし同じく独立支持の緑の党が8議席と躍進し、独立支持派の議員は両党合計で72となり過半数を超えることになります。 SNPは公約に2023年までの独立を巡る住民投票を掲げ選挙戦を戦い、過半数には届かなかったものの圧倒的な第一党としての結果を残しました。結果を受けて党首のニコラ・スタージョンは住民投票開催へ向けて準備を行うと述べました。一方でイ

        • スコットランド議会選挙で投票する

          今日5月6日はスコットランド議会選挙の日で、全国各地で投票が行われています。スコットランドは昨年参政権を拡大し、現地在住の長期滞在の外国人や難民にスコットランド議会選挙と地方自治体選挙での投票権を与えることになりました。 私もスコットランドに来て14年になりますが、今年初めて参政権を得て、今朝娘を保育園に送る途中に投票してきました。 スコットランド議会の議席数は129で、スコットランド独立を目指すSNPが過半数を確保するかが最大の注目点となっています。SNPが公約にコロナ

          スコットランド独立にまつわる誤解を紐解く

          来月(2021年5月)にスコットランドは議会選挙を迎えます。昨年から世論調査では独立支持が過半数を超えてきていることもあり、この人口550万人の小国の政治情勢が世界的な注目を集めています。独立支持派のスコットランド国民党(Scottish National Party = SNP)は2023年までの独立を巡る住民投票の開催を公約にしており、SNPが過半数を確保するかどうかが最大の焦点になっています。 一方で、スコットランド独立を考える際に、残念ながら日本語のメディアではよく

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          コロナ禍とスコットランド独立――UKの終わりの始まりか?

          (この記事はシノドスに2020年8月に掲載されましたが、海外からのアクセスをシノドスが禁じているようなのでここに再掲載します。) はじめに2020年夏、コロナ禍中のUKでスコットランド独立が再びニュースになっている。というのも、最近の世論調査で独立支持が着実な伸びを見せ、最新の7月上旬の調査では独立賛成54%(「わからない」回答を除く、以下同)とかつてない高い数値を示したからだ。 この状況を受け、ボリス・ジョンソン首相は7月下旬に急遽スコットランドを訪問し、UKの連合を

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          イギリスのEU離脱とスコットランドー独立への茨の道

          (この記事はシノドスに2016年6月に掲載されましたが、海外からのアクセスをシノドスが禁じているようなのでここに再掲載します。) はじめに UKでは6月23日にEU離脱をめぐる住民投票が行われ、離脱派が52%の票を集めて勝利した。UK北部のスコットランドでは離脱派が38%、残留派が62%と、EU残留への支持が強く、離脱を支持したイングランドとウェールズとのEUへの姿勢の違いが顕著に現れた。 これを受けスコットランド首相のニコラ・スタージョンは、EU支持を表明したスコット

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          SNPの躍進とナショナリズムの再定義-国のかたちを再想像するスコットランド

          (この記事はシノドスに2015年6月に掲載されましたが、海外からのアクセスをシノドスが禁じているようなのでここに再掲載します。) はじめに 2015年5月のイギリス総選挙で、スコットランド国民党(Scottish National Party = SNP)が議席を6から56に急増させ脚光を浴びた。 過半数以上となる331議席を獲得し政権を組んだ保守党、232議席の労働党に次いで、SNPはUK全体の第三党となっただけではなく、スコットランドにおいては50%の得票率、59

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          スコットランドで何が起こっているのか-民族とアイデンティティを超えた独立運動

          (この記事はシノドスに2014年9月に掲載されましたが、海外からのアクセスをシノドスが禁じているようなのでここに再掲載します。) はじめに イギリス北方のスコットランドは、UKからの独立を問う住民投票を間近に控えている。2012年にUK・スコットランド両政府間で住民投票開催が合意され、独立賛成派と反対派がキャンペーンを繰り広げてきた。独立賛成・反対への支持は、2013年末~2014年初頭に若干賛成派が伸びを見せたものの、一貫して賛成3割強、反対5割弱程度で推移し、スコット

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