沢村賞の基準項目は現代野球に合っているのかを検証してみた
カバー画像は本年度沢村賞受賞者の山本由伸の日本シリーズでのバントシーンです。冒頭からわかりづらくですみません笑
さて、野球界の風物詩と言いますか毎年この時期になると話題になるのが沢村賞。誰が受賞したのかという話も当然ですが選考委員会の皆様のコメントがニュースになるのも毎度おなじみ。どの業界でもあるお話だとは思いますが「昔はもっと良かったのに」みたいな話が出るのは個人的には好きです(笑) 今年は山田久志さんがこんなお話をされていました。
さらには堀内恒夫委員長もこんなコメントを。
まぁつまりは今の先発投手にもっと投げろ、投げてなさすぎだと仰っていると理解しております。確かに金田正一さんや権藤博さんが400回とか投げていた時代(それはそれでどうかと思うけど)から比べると投げていないのは確かなんですが、では過去の沢村賞受賞者は実際どうなのよというのを見ていきたいと思っています。そのためにまずは過去の沢村賞受賞者全員の成績を並べてみました。
縦長過ぎてすみません…。色が付いているセルが選考基準を満たしている項目となります。ちなみに沢村賞は1981年までは記者投票で明確な選考基準はなく、1982年から選考委員会が出来て選考基準が出来たということも補足しておきます。1981年は江川卓さんではなくて西本聖さんが受賞されて大きな話題になった年ですね…いつも話題の中心にいる江川さんは凄い。詳しくは「江川 沢村賞」で検索してください。かなり面白いです。
ざっと上から見ていくと1980年頃までは完投数20-30、投球回300-400などなど今では考えられない凄い数字が並んでいます。特に1957年から1965年までは全7項目を満たした状態が続いており、近年で全項目満たした状態での受賞は2018年の菅野智之のみなので時代の違いを感じます。
その他に特徴的なところと言えば1970年代から2000年代前半までは防御率を満たしていないケースが多く、2000年以降は冒頭に話題にもなった完投数や投球回を満たしていないケースが多くなっています。これを年代ごとでまとめてみると、
登板数・・・全体でも97.3%とどの年代でも高水準
完投・・・1980年代までは高水準だが徐々に下がって2010年以降は25%
勝利・・・登板数と同様に全体でも97.3%とどの年代でも高水準
勝率・・・登板数と完投と同様にどの年代でも高水準
投球回・・・2010年以降のみ50%以下
奪三振・・・100%を記録したのは2000年代のみ
防御率・・・100%を記録したのは2010年以降のみ
という結果になりました。
近年の傾向で言えば完投や投球回の達成率は下がりつつあるが、奪三振と防御率の達成率は高水準にという形になっています。奪三振は投球回が増えれば自ずと増えるはずですが、防御率が2010年以降で100%というのが非常に面白いですね。(※区切り方に異論があるのは認めます。)
ちなみに今では当たり前となっている最多セーブ投手のタイトルは1974年に新設されたものです。完投や投球回がそれ以降で下がりつつあるのもそのような影響があるのかもしれません。
また、今回調べてみて思ったのは沢村賞自体が沢村栄治さんを称える賞であり、いわゆる先発完投型を求めているのは理解しているのですが基準項目自体は1982年に設定されたこともあり、その直前の1970年から1981年の沢村賞受賞者の成績を基準にして作成されているのではと思いました。
特に防御率は基準が2.50ですが2010年以降の平均でも1.79、対象を広げた2000年以降でも2.11と余裕でクリアしており、完投や投球回に比べるとかなりハードルが下がっている印象があります。(もちろん2.50も十分凄いですがあくまでも相対的な話として。)
あとは勝率も基準が0.600に対して2000年以降は0.749なのでこちらも余裕でクリアしております。昔は投げてなんぼなで勝率よりも勝利数が意識されていた影響かなと。
なので「完投や投球回数が物足りない!」と言っている方は「防御率や勝率もヌルすぎる!」と主張しないといけないのではと思ったり。
上の表の2000年以降の平均から基準を作るとすれば、
登板/勝利/投球回・・・このままの数値でも良いのでは?
完投・・・達成率も踏まえて緩和しても良さそう
勝率/奪三振/防御率・・・もう少し厳しくしても良さそう
といった感じでしょうか。
過去の数値も踏まえて基準項目の数値の見直しやそもそもで「先発完投型を称える」という賞のテーマ自体の見直しが必要なのかもしれません。
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