日記を習慣化して本にして売ってみた
この記事はファンタアドベントカレンダー2023の20日目です。
はじめに
ことの発端は、コロナ禍になり、家で過ごす時間が増えたことだったような気がしています。
なんとなく日記を書いてみるのもありかもしれない。時間はあるし、ダラダラしているのも勿体無いからやったことないことを習慣化してみたい。
そんなことを考えていました。
何のツールで書くかは迷っていましたが、せっかく書くのだから、ブログっぽくしたい。
でも面倒なのは続かないはわかっていたので、 Notion を使うことにしました。
一応初めのモチベーションとして、 Next.js + Vercel で ISR が動くようにしたので、記事を修正したら数回のリロードで反映される。
Notion で読んでもらってもいいし、 Vercel にデプロイした方の URL で読んでもらってもいいと。
このために Netlify でホスティングしていた僕のドメインを Vercel に移行などをしました。
日記のリンク
Notion に書いてる日記
Next.js + Vercel の日記
データの元となる DB は、どちらも上記の Notion になります。
習慣化のコツ
日記あるあるだとは思いますが、毎日続けるのが大変というのがあります。
僕はどこで読んだのかは忘れてしまったのですが、書けない日は「お休みする」と書くことでその日の日記を done にするというのを読んで、それ以降、たまにではありますが、日記をお休みにしている日があります。
書けば、実際には休みにはなっていないという自己判断にしてるので、これはこれで done なのです。
以下に例を参考程度に貼っておきます。
また、これも別の本で読んだのですが、毎朝のランニングを習慣化する方法というので(これが多分一番世の中で難しい習慣化だと思っています)、雨が降っていた時にどうするか、というのが書かれていました。
その本には、雨が降っていたと起きた時に気がついたら、起きてランニングウェアーにも着替えて、一旦家から出る、その後すぐに家に入って、着替えて日常に戻ると。
つまり、ランニング自体はしていないのですが、その手前までは行うことで、一応 done にするという感覚です。
こういうのも結構大事で、僕が上記で日記に休みと書くのと同じで、とりあえず書いたり着替えたりして、少なくともちょっとはやった感を出すという感じです。
なぜNotionにしたのか
MacBook で普段仕事していますが、日記を書くときは大体 iPhone が多いです。 iPad で書いていた時期もありましたが、それだったら iPhone でもいいなという感じがしていて、移動中の電車の中で書いたり、旅の途中のどこか喫茶店で書いたり、場所は様々です。
Web 版や iPhone アプリ、iPad アプリがあるので、どこでも日記が書けるという意味で体験がとにかくいいのがあります。これも続けるコツとして大事だと思っていて、今この日記とは別に食べたものを物理的な日記帳に1年ほど毎日書いているのですが、漢字が書けなくなっているので、結構大変です。
そのために、 iPhone で見るのに最適化しちゃってますが、入力した文字を拡大するページを作ったりして工夫しました。
あとは画像が並ぶと楽しいので、毎日何かしら写真を撮るようになったのも大きい体験でした。というか楽しいです。
食べたものでもいいし、読んだ本でもいいし、その日何をしたのかが後からずらっと並んでいるのを見返すのも楽しいです。
今は2年と4ヶ月分の日記があります。
かなり大量の画像を読み込むので、下にスクロールし続けるとブラウザがかくつきます。それぐらいの画像や日記を書いてきたんだなと思うとなかなか達成感があります。
もう一点良い点としては、人にこの Notion のページを見せたときに、みんなが「いいですね!」のように言ってくれることです。
多分文字だけが並んだページよりも躍動感があって、そこで面白いと感じてもらっているんだと勝手に思っています。
でも文字だけの日記こそ、やっぱり日記なんじゃないかとも思っています。
細かいですが、ソートやフィルターの機能も便利で、特定の期間だけで絞り込みができるので、夏に何してたっけ?という感じで見返すことができます。
(自分の日記を見返すことは、なんだか小っ恥ずかしいので、ほぼしませんが)
日記を書いて何がよかったか
これは僕にとっては良さしかないのですが、一番良かったのは自己対話ができたことじゃないかと思います。
毎日日記を書くので、書くタイミングで自分の今日を振り返ります。あるいは、何か起きたタイミングで書きます。
その時の感情を整理することができている感覚がありました。
これは、あんなことが僕は嫌だと思っていたのかー、や、あの手の話はなんだかワクワクするんだな、のように、今まであまり理解できていなかった自分の感情を確認することができました。
これは本当に大きいものでした。何より自分が何をされたら嫌なのかを文章で可視化できたので、そういったネガティブな部分にもちゃんとフォーカスできるようになりました。
ある意味諸刃の剣感がありますが、自分の気持ちを内省できたのが良かったです。これまではそこまでやってこなかったのもあるので、人生って面白いなーと思いました。
本当にワクワクすることが大事なんだということが、腹落ちしました。
人の日記にも興味がでた
本当に多くの日記本を読んできましたが、それはやはり日記を自分で書くようになったので、人の日記が気になってきたからだと思います。
日記本は自費出版で販売されているものが多いので、そこもまた楽しいです。著者に SNS で面白かったですと伝えられるのも良さです。
本にする初期衝動
過去に日記祭という日記本をメインに扱うイベントに一度行ったことがあり、その時の体験がすごく良く、ずっと日記祭は気になっていました。
今年も開催の時期になり、日記の本屋さんの月日さんから第4回をやるという記事が上がった時に今までは僕が買いに行く側だったが、売る側になってみるのも楽しそうだなと思いました。
文学フリマに行った時も、自分が売る側になれたらどんなに楽しいのだろうかと思っていました。
そこで、募集が開始されたのを見て、速攻でエントリーしてみました。
結果、希望の午後の部で販売することができたので、そのメールがきた時は、部屋で踊るほど嬉しかったです。
本にする方法
さて問題は「日記を本にする」というベーシックな課題が僕を苦しめました。
Notion には雑に書いてるので、無駄なリンクや画像などを消した版をどこで管理するか
そもそも本にしようと思っていなかったので、プログラムコードが大量に載っていた
雑すぎる日があって、読む人が面白いと思ってくれるか不安だった
校正はどうするのか
推敲もした方がいいのか
あまりやりすぎると作られた日記感が出てしまわないか
いつからいつまでの日記を本にするのか
そのくらいの文字数でページ数になるのか
何を使って本の組版を作るのか
一体どんなツールが世の中にあるのか
どうやって製本にするのか
いくらぐらいでどこにお願いするとどれぐらいでできるのか
本当に何も分からなかったので、すでに泣きそうでした。
何1つわからないという状態のまま、日記祭に応募したので、序盤は呑気なものでしたが、日に日に時間は過ぎていき、いよいよまずいんじゃないか?と考えるようになります。
NotionからGithubへ
手始めに、まずは Notion で管理してる日記から文章だけを抜き出して、きちんと管理するというのをやり始めました。
そこで、 Github で管理することにしました。
Github で管理することで、バージョン管理ができたり、人に markdown ファイルを見せることで、願わくばプルリクエストがもらえないかと他人すらも巻き込もうと考えていました。
序盤は InDesign を使うというのを想定していなかったため、本を markdown で作れそうなツールを試したりしてました。
ただし、かゆいところに手が届かなかったり、少しバグもあったりしたので、難儀していました。
いろんな方に相談した結果、やっぱり正攻法の InDesign でちゃんと組版していくことにしました。
なので、 markdown を Notion から Github へ1年間分をコピペしつつ、膨大な文章を音読しながら校正と推敲をして、無限に git push していきました。
この作業が序盤に相当きつかったです。
何か自動化できないか、今後考えていきたいと思います。
やっぱり手作業は辛いですね。
でも、この作業を人にお願いするわけにはいきません。これが醍醐味だからです。
textlintの力を使う
textlint というツールである程度自動でチェックをしたり、手で直すと気が遠くなるような作業をコマンド一発で修正できるようにしました。
「ですます」や無駄なスペースを除去などを自動化できたのは本当に大きく、もしできなかったら自分で 18 万文字を超える文章から間違えなく添削しないといけなかったです。
あとは「あああ hoge いいい」のように hoge のような英字の前後に僕はスペースを入れるタイプなのですが、これが鬼門でした。 InDesign に流し込むとそもそも英字の上下にそこそこなマージンが取られるので、半角スペースが空いてることでさらに余計な広さのマージンになってしまいました。
これも textlint なら一発で統一できます。スペースを除去するのも一瞬、逆に入れるのも一瞬です。
今回使った textlint の設定を書いておきます。
filters の whitelist でたとえば「」の中身は textlint でチェックしないようにしました。
これは、何か引用するときに、「」を使うことで、ですますが一致しなくてもエラーとしないようにしました。
こういう細かいところも一個ずつやっていく必要があるのです。
JavaScript から TypeScript に移行するときに、無限にエラーが出るのと同様、 textlint を入れることで膨大なエラーが吐き出されました。
{
"rules": {
"no-todo": true,
"preset-jtf-style": {
"2.1.6.カタカナの長音": false,
"3.1.1.全角文字と半角文字の間": false,
"4.2.6.ハイフン(-)": false,
"4.2.7.コロン(:)": false,
"4.3.2.大かっこ[]": false
},
"preset-ja-spacing": {
"ja-nakaguro-or-halfwidth-space-between-katakana": true,
"ja-no-space-around-parentheses": true,
"ja-no-space-between-full-width": true,
"ja-space-between-half-and-full-width": {
"space": "never"
},
"ja-space-after-exclamation": false,
"ja-space-after-question": false,
"ja-space-around-code": {
"before": true,
"after": true
}
}
},
"filters": {
"whitelist": {
"allow": [
"/.?\\d+/",
"/「.+」/gm"
]
}
}
}
そして、さらっと 18 万文字と書きましたが、とんでもない量の日記を1年間で書いたなと思いました。
$ wc -m *.md
結果は 182929 total でした。
18万文字越え!
一冊目の日記本にしてはやりすぎです。完全にやりすぎです。
推敲
あまりしないようにしましたが、あまりにも文章としておかしいところは直しました。
ただ一人ではあまりにも膨大な量すぎたので、 Github の URL を数人の友人に送りつけて、レビューしてもらいました。
おかげで些細な部分の間違いや、ありがたいフィードバックをいただいたので、そこを速攻で反映させました。
これぞ僕にとってありがたいフィードバックなんだなーと感じました。
InDesignで組版へ
日記はとりあえずキリがいいので、1年分でやることにしました。
それぐらいじゃないといい感じの分量にならないんじゃないかと思ったからです。そしてこの時の決断にこの後もずっと苦しめられました。
InDesign は本当に何もわからないので、 YouTube で検索しました。結果こちらのチャンネルに相当助けられました。というかこのチャンネルだけで全部事足りました。
Github の URL はこちらです。
こちらに今回の InDesign や製本の細かい話を掲載しています。
素材から .indd ファイルまで全て置いてあります。
もし本を作りたいという方がいたら、是非参考にしてみてください。
表紙のテキストなどは Photoshop で画像として作って、 InDesign 上からリンクさせています。
PDF へのパブリッシュの仕方なども README に書いてありますが、書き出しページをページか見開きにするかがとても重要でした。
PDF 化が終わればいよいよ製本です。
PDF 化は、お願いする製本会社さんによっては、やり方が違う可能性があります。今回お願いしたところ向けには README で書いた通りなので、他の時はうまくいかない可能性もあります。
製本
何社か見積もりしてみたのですが、一番安いところに今回は注文してみました。
「ちょ古っ都製本工房」さんです。
その後、いろんな日記本の奥付を見ていたら、結構こちらを利用されている方が多かったので、間違いないなと思いました。
製本に関しては、ほんと何もかも初めてなので、ほぼ泣きながらしていましたが、まずは一冊パブリッシュしてみないと表紙の素材感やどんな雰囲気なのかわからないので、一冊だけの注文をしました。
一冊だと結構高くついてしまいましたが、後々大量注文した時に、やっぱりこれじゃないとなる方が辛いので、大事なことでした。
製本したのが届いた時の僕のツイートです。レモン色がちょうどいい感じの玉葱カラーになってよかったです。こういうチョイスが自分ぽいなと思いました。
相当嬉しかったです。
その後、僕の本屋「玉葱堂」のロゴを背表紙に入れたりして、大量の製本を行いました。
これは友人がくれたアドバイスを参考にしました。
日記祭での販売
製本も終わり、いよいよ、日記を販売する日がやってきました!
いろんな小物から、ポップの作成まで全て自分でやるからこその楽しさがそこにあります。
前日に百均で画用紙を買ってきて、値段やどういう日記かのポップを作ったり、自分の写真を拡大したものを額に入れたりして、なんとなくこんな感じというブースを思い描いて、いざ実際にそのブースを作ってみたら、ほんとピッタリとスペースに収まってよかったです。
知人・友人や、立ち止まって見本を手に取って買ってくれた方など、いろんな方が買ってくれてとても嬉しかったです。
こういう成功体験は本当に貴重で、今後の僕の人生に大きく影響する気がします。
手売りって面白いですね。相手からいただく1000円が大切に思え、自分が渡す自分で作った日記本をお渡しする手は震えていました。
トータルで見ると、壮絶に赤字なのですが、あまり気になっていません。
こういうのは後からついてくるものだと思っているので、まずは自分ができることを少しずつ行動に移してみて、具体的に動いていってみています。
僕が好きな相田みつをのこの言葉がいつも脳裏に浮かびました。
おわりに
「一年間の日記を書いて、それを本にして、売ってみる」という行為の話を書いてみましたが、ある意味途方もないチャレンジでもあったなと思っています。
日記を書くのもなかなか大変ですが、さらにそこから日記を読み返して校正するという部分は、本当に辛くて、朝まで作業してた後半は、楽しくもあり、辛くもありました。
人生初の本を自費出版できたのは、いい経験になりました。
たまたま日記祭の直前に手術をするというライフイベントが入ってしまいましたが、当日までは傷の調子も良くなったので、なんとかなりました。
ホッとしています。
今後もこういった自分がまだやったことないジャンルに果敢にチャレンジしていこうと思っています。
もしよかったら、僕のオンライン本屋で僕が好きな本だけをラインナップしているので、覗いてみてください。
明日、21日目はエンジニアの松江さんが「タスクの見通しを良くする工夫」について書いてくれます!お楽しみに!
それではまた。
メリークリスマス。
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