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「松岡享子からの贈り物」展と文庫への気持ち
1月終わりに
「松岡享子からの贈り物」展を見てきました。
松岡さんがご自身の「まんまんなかにある」
と語った東京子ども図書館。
作家として、創作も翻訳もエッセイも
たくさんご著書のある松岡さん。
だけれど、松岡さんが“まんまんなか”に
子ども図書館があったというように
これまでもこれからもずーっと、
子ども図書館のまんまんどまんなかに
松岡さんがやはりおられるのだと感じます。
展示および求めた記念冊子には
「東京子ども図書館と松岡享子」として、
冒頭そのお仕事を
①本と出会う場所をつくる
②子どもと本を結ぶ
③人を育てる
④本を届ける と、4つに紹介していて
この並びを聞いて、
児童文化に関わる人ならば
松岡さんの名をあげるんだろうと思うのです。
わたしがはじめて
東京子ども図書館に行ったのは専門学生時代。
新館ができて数年の頃だったはず。
その前に、当時まだ
埼玉の実家で暮らしていたわたしは、
子どもの時から通っていた
近所の公共図書館で活動する
おはなしサークルに加入させてもらい
『愛蔵版おはなしのろうそく』を
ポケットにしのばせていた時期もありました。
最初におぼえた素話は「りこうなきさき」!
その頃はまだ家庭文庫というものに
実際に行けた機会がなくて、
かつら文庫とか松の実文庫とか聞いても
イメージがわかなくて、
だからなのか、
東京子ども図書館を訪れて
あの「おはなしのへや」に足をふみいれたとき
なんともいえない懐かしさや
涙の出るような想いが溢れました。
たぶん同じころに、
松岡さんのエッセイ
『サンタクロースの部屋
〜子どもの本をめぐって』を読み
(↑ 1978初刊、リンクは改訂新版)
なんでこの人は、
わたしがほとんど自分でも捉えきれず
また、人にも言えなかったようなことを、
わかっておられるのだろうと、
その懐に包み込まれたような感動がありました。
松岡さんの思想・子ども論に触れ
記憶の中で眠っていた
なつかしい保育園のじゅうたん部屋が
彩りも温もりも心のまんなかに
蘇ってきて、それは自己肯定感に
そして癒しとなりました。
わたしなりの創作をはじめられたのも
今思えばそこからかもしれません。
おはなしのへやと
サンタクロースの部屋と
わたしのじゅうたん部屋は
ひとつのイメージで結ばれて
それはそのまま文庫への憧れになった
ものの……
その後わたしは、上野国際子ども図書館で
アルバイトする時期もあったけれど、
図書館学や児童図書サービスの世界においての
挫折をおそらく感じてしまって
少しずつ離れていったところがあります。
巡り巡って、子どもが生まれ、
息子の通った園には区の文庫連会員である
図書室(文庫)を運営していて関わったし、
さらに数年経って、今度は娘と
おとなり西東京市の家庭文庫に
出入りするようになっていて、
今度は自分が、くすくす文庫を立ち上げた。
このタイミングで
建て替え直前の東京子ども図書館を再訪し、
さらには松岡さんの本展示。
触れて、出かけて、
こみあげたのは、やっぱり涙が出るような
あたたかな、あこがれの想い。
今回はじめて、松岡恵実さんのお姿
そしてお話を上映動画で拝聴できて
その静かな語りから感じた
松岡享子さんの姿が、
わたしには
あの、まるで懐にいれてもらったようだった
読後感、そのときの松岡さんへの
勝手な親しみと繋がって、
会えたようなしみじみとした嬉しさがあった。
「みんなの中でも、一人でいられる人だった」
と恵実さんの語る
松岡さんの居姿が、
わたしにも、見えたような気がしたのでした。
松岡享子さんありがとうございます。
わたしなりに、急がずに
この道をゆきます。
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