ChatGPT Advanced Voiceモードと一緒に授業してみた
はじめに
『英語教師のためのChatGPT活用ガイド』著者の南部です。
昨日リリースされたChatGPTのAdvanced Voiceモードを試してみたところ、その流暢な話し方に驚かされました。応答も非常に速く、発話中に割り込むこともできるぐらい、とにかく自然です。
「これなら授業でも使えるのでは?」と感じ、実際に授業で使用してみることにしました。
【準備編】 ChatGPTと授業内容を話し合う
まずはカスタムインストラクションを作成
ChatGPTのAdvanced Voiceモードは、カスタムインストラクションを使用できるとされています。
授業中に状況の説明や指導方法について話し合うのは、時間がもったいないと感じたため、まずは事前にChatGPTと音声で会話しながらカスタムプロンプトを作成することにしました。
主に以下のポイントについて話し合いました。
生徒の英語力・学年
ChatGPTと教師間名前の呼び方
授業で何をするか
いろいろと話し合ったのですが、今回は、用意できるAdvanced Voiceが使えるChatGPTのアカウントは1つだけだったので、ベタに教室全体で「Who am I?」を行うことに決めました。
レート制限の壁
しかし、ここでトラブルが発生しました。
ChatGPTと授業について話を詰めていると、ChatGPTから「残り15分」というレート制限の表示が出てきたのです。
調べてみると、公式のFAQに次のような記述がありました。
「残り15分では、できることも限られてくる」と思い、残りの時間は授業用にとっておき、さっそくまとめの作業に移りました。
会話の最後に「カスタムインストラクションを書いて」とお願いし、出来上がったものが以下の通り。
作成されたカスタムインストラクション
# Custom Prompt for ChatGPT in Class:
Hello, I'm ChatGPT, an AI language model here to assist 南部先生 and help you learn English.
I will start by asking you a simple yes-or-no question: "Do you like learning English?"
After that, I'll ask you a '5W' question to learn more about you: "What is your favorite English word?"
正直、いまいちでした。
これ以外にもたくさん話していたのに、一部だけ切り取られてまとめられているような印象です。この感じから察するに、GPT-4o miniのような軽量なLLMがバックグラウンドで動いているのかもしれません。
改良版のカスタムインストラクションを作成
これではいけないと思い、会話内容をコピーして、OpenAI o1-previewでカスタムインストラクションを作成してもらいました。語数制限の1500語をオーバーしていたので、一部修正して完成したものがこちらです。
改良版カスタムインストラクション
You are ChatGPT, an AI language assistant helping Nambu-sensei teach English to Japanese high school students with A1 English proficiency.
* Language Use:
* Communicate primarily in simple English using short sentences and basic vocabulary suitable for A1 level students.
* Self-Introduction:
* Begin the class by introducing yourself with specific information.
* Student Engagement:
* After your introduction, ask the students a simple yes-or-no question.
* Follow up with a 5W question (Who, What, When, Where, Why).
* Wait for the students to respond through Nambu-sensei, as they cannot speak directly to you.
* Activities and Games:
* Facilitate simple games like "Who Am I?" that are suitable for their language level.
* During games:
* Do not provide unsolicited information.
* Answer only when students ask questions.
* Classroom Dynamics:
* Address the teacher as "Nambu-sensei."
* Be aware that students do not have microphones; their responses will come through Nambu-sensei.
* Be patient and encouraging to promote a positive learning environment.
Goal: Assist in making the English class interactive and enjoyable while supporting the students' language development at their proficiency level.
このカスタムインストラクションを設定画面にコピペして、授業に向かいました。
【授業編】ChatGPTと一緒に「Who am I?」を実施
レート制限もあったため、実際に授業では10分ほど時間を使って、生徒たちとChatGPTを使って「Who am I?」を行いました。
一部、文字起こしされたデータが残っているので共有します。
その後、生徒たちは英語で質問を考え、ChatGPTに質問します。
ChatGPTは自然に生徒の質問に返答し、生徒たちは楽しみながら英語でのコミュニケーションを体験することができました。ラグがほとんどないので、本当に外国人と話しているようです。
生徒が理解できない部分は「speak more simply」や「日本語で説明して」とお願いをすると、すぐに日本語で対応してくれたのも便利でした。
一方で、最後に講評をお願いしたら、「Great job!」ぐらいの返答しか返ってきませんでした。
後から、会話の履歴を見ると、生徒の発話が文字起こしされていないので、ひょっとするとそこに原因があるのかもしれません。
なぜうまく音声認識がされなかったのかという点については、生徒の発音の問題というよりも設備面での準備不足が原因だと思っています。マイクを用意せず、iPadの近くに来てもらい話してもらう形で使用したので、実際に活用していくには、マイクが必要かもしれません。
授業を終えて
実際に授業をしてみて、感じた良い点とイマイチだった点は次の通りです。
良い点
自然な会話:ChatGPTのAdvanced Voiceモードは非常に自然で流暢な英語を話すため、普段ALTや外国人と話す機会がない生徒にとって良い機会になったと思います。
不安の少なさ:AIとの会話なので、生徒たちは比較的間違いを恐れずに英語で話している印象でした。
エンゲージメントの高さ:ゲーム形式だったことや新しいテクノロジーを使用したこともあり、生徒たちの興味を引くことができていました。生徒たちはこの活動に積極的に参加していました。
常にポジティブ:ChatGPTは安定して常にポジティブに語りかけてくれます。話してみようという気にさせてくれます。
イマイチだった点
レート制限の問題:レート制限により、フルに活用できませんでした。少なくとも1日に何分使えるのかがはっきりしていないと計画が立てづらいですね。
カスタムプロンプトの効果:会話の中で、ところどころカスタムプロンプトが本当に機能しているのか怪しいなと感じるところがありました。(この部分はもう少し検証したいと思います。)
LLMとしての性能:授業中の簡単なゲームでは感じなかったのですが、授業の計画をしているときに会話内容をまとめさせたときに、Advanced VoiceモードのLLMとしての性能には「おや?」と思うことがありました。
設備の必要性:授業で生徒がChatGPTとやり取りをするには、マイクが必須です。また、スピーカーなども必要となるので、準備が必要です。iPhoneやiPadに接続できるワイヤレスのマイクって基本学校にないですよね。
これからの英語授業への期待
現状、このAdvanced Voiceを使用するには月額20ドルかかるので、学校で生徒全員がそれぞれアカウントを持って使用するのは現実的ではありません。
また、今後APIが提供されても、しばらくの間は価格が高いことが予想されます。
しかし、数年後、価格が安くなり、学校でも導入できるようになると、英語教育はまた大きく変わると感じました。
まとめ
今回、ChatGPTのAdvanced Voiceモードを活用することで、英語教育の新しい選択肢が見えたように感じました。
一方で、レート制限や設備面での準備、高度なこと(やコンテキストが大量に必要なこと)をさせようと思ったときの性能への不安など懸念点も見つかりました。
今後はこれらの懸念点を踏まえ、さらに検証を進めてみたいと思います。
【おまけ】Xで見かけた投稿
Xでもさまざまな活用方法や意見がさっそく投稿されています。気になったものをシェアします。