テラリウムの子供たち

 遥か遠い世界に、石で出来た生物が地球を統治していた。
 石で出来た彼らは、暗い色の固い物質で覆われていた。
 体を叩いて出る音でのみコミュニケーションを取る、不思議な生物だった。

 そんな彼らの楽しみは、テラリウムの子供たちの観賞だった。

 テラリウムの子供たちは、石の彼らとは全く違う見た目をしていた。
 透き通る白色や、吸い込まれる黒色の柔らかい肌を持ち、真っ青な空色の瞳や光の加減で金色に見える薄茶色の瞳。にこりと良く動く顔の表情。
 愛玩用としてはこの上ない至上なモノとされていた。大きなガラスの容器の中に、大事そうにしまわれていた。

 ただひとつ、子供たちはとても弱かった。
 言葉が子供たちを傷つける全てだった。名前を呼ぶそのトーンにも、悪意と子供たちが感じとると、彼らは綺麗な瞳を潤ませ可愛い顔を泣き腫らして死んでしまった。

 幸いなことに石の彼らは言葉を持たなかったので、テラリウムの子供たちはのびのびと小さな箱庭で生きる事が出来た。言葉は子供たちには邪悪な物となっていた。長い長い進化の過程で、言葉に対する耐性を失っていたのだ。

 テラリウムの子供たちは、昔人間という種族だった。

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