「いわむらかずお」さんの原画を観に
酒田市美術館に行ってきました。市郊外の飯森山、土門拳記念館などのある一角ですが、本当に見晴らしの良い、ついでに風通しもすこぶる良い、小高い丘の上にあります。敷地面積は約3万平方メートルだそうで、なんか、すっごいゼイタク。これは地方ならでは、ですね。
施設は、地形をとても上手に利用して建てられていて、ただ館内でぼんやりと時間を過ごすだけでも心が解き放たれる感じですが、若干デザイン優先の弊害もあるかに見えます。入口までのアプローチがあまりにも長すぎたり、トイレが迷路のようだったり、そもそも入口がどこなのかわかりにくかったり。使い勝手が二の次になるのは、現代建築の特徴なのかもしれません。
それはともかく、今回の目的は「いわむらかずお『絵本の世界展』」を見ること。ね、ね、みんな好きでしょ? いわむらさんの絵本。わが家にも「14ひきシリーズ」があってね。子供たちがまだ小さかったころには、毎日のように、夜、布団の中で親子して眺めていたものです。
それにしても、原画の美しさは格別ですね。印刷だとどうしても線が甘くなるけれど、原画はくっきり・すっきり。色彩だって濁りなく鮮明で、デッサン力の確かさまでもがよ〜くわかります。いや、気持ち良いですよ。
また、通して見ていると、いわむらさんの画風の微妙な変化も見て取れます。「14ひきシリーズ」でいえば、「おつきみ」あたりから細部の省略、ぼかしの多用、表現の様式化が目立つようになりますね。好き好きでしょうが、彼の細密画風の描写に惹かれるぼくとしては、少しだけ残念な気がします。
今回の企画展では、とても嬉しいことに中学生・小学生の入場料が無料でした。「半額」じゃなくて「無料」だったんです。出来るだけ大勢の子供たちに見てもらいたいという、主催者、あるいはいわむらさんご自身のお気持ちが窺えますね。この企画はオススメです。(2004.04.01)