スターガールに会いたい

 アーチー(「ぼく」の私的先生──引用者注)のことばはぼくの耳から入ってくるのではなく、ぼくの肌にはりついてもぐりこんだような気がした。ことばは、雨を待ちつづける小さな卵のようにぼくの成長を待ち、ある日、とつぜん孵化して、ついに理解することになるのだろう。

ジェリー・スピネッリ『スター★ガール』、理論社、175頁


 そう。「わかる」というのはそういうこと。でも、『スター★ガール』の主たるテーマはそういうことじゃない。

 スターガールは血に餓えた「みんな」に追放されてしまった。みんなって誰のこと? みんなって本当にみんな? みんなにならないと、一人になっちゃう? 自分のままでいるって、アメリカでも難しいのかなぁ。スケールは大きいけれど、しょせんムラ社会。ひねこびたオトナ社会。

 オトナになるっていうのは、みんなのグループに入ること。スターガールと別れること。スターガールを裏切ること。そんな痛みをいつまでも引きずっているあなたとぼくのためのお話が、『スター★ガール』です。

彼女はわたしたちそのものなんだ。明白にね。彼女はわたしたち以上に、わたしたちと似ているといってもいい。彼女は、わたしたちの本来あるべき姿なのではないかと思うほどだよ。もしくは、わたしたちの過去の姿か。

前掲書55頁

 児童文学、もしくはヤングアダルトにジャンル分けされる文学と言うのは、こんなにも痛切で、深く、そして遥かなものなのですよ。〈心の負荷が大きすぎて、なかなか読めない時期がある〉と告白されるほどに。

 ワケノワカラナイ文章でごめん。でも、『スター★ガール』はストーリーで読ませる小説じゃないから。まずは再会することだ、あなた自身のスターガールと。(2002.11.24)

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