粕谷正一展を観て
昨日、お昼休みを利用して鶴岡アートフォーラムに行き、「粕谷正一展」を観てきました。彼はぼくの高校時代のクラスメートで、現在石川県で高校教師をしながら二科会の会員として活躍する洋画家です。
全体を見渡すと、確かな描写力と、種々雑多なモチーフを見事にまとめあげる構成力に関心させられます。
現在の作風は意外に早い時期から始まっていたようですが、もちろんその中にも変遷はあります。色彩的にも変わっているけれども、一番は空間表現でしょうか。一時はかなり平面的・装飾的だった(その意味では日本的でもあった)彼の作品に、空間が感じられるようになってきたのです。象徴的なのは、中心的なモチーフとして描かれるトルソでしょう。すっくと立ち上がり、空間を作り上げているのです。
あとは、この空間になにが満たされるか、でしょう。情念や空気や光ではないような気がします。彼の絵は具象だけれども写実ではないのだから。それでは真空でしょうか?
いずれにせよ、新たな粕谷正一の絵画世界の萌芽が、近作にみられたのはうれしいことでした。彼には──もちろんぼくにも、ぼくたちの世代にも──変貌が欲しいのです。変わる事こそが、生きる事なのですから。(2008.09.24)