心のおもむくままに

 もう冬のような天気なのに、のんきにこんな写真をアップするとは……。でも、その日はいい天気だったんですよ。晩秋そのものでね。

 また別の日。庄内平野のど真ん中。交通量の少ないスーパー農道をひた走っていると、左から数羽の白鳥が離陸の体勢。あまりにも道路の近くから飛び立っているので、このままぼくが車を走らせていては危険のような気がして、ブレーキを踏む。すると一羽はそのままかまわずまっすぐに飛び立っていったものの、他の白鳥たちは左に旋回するではないですか。わずか数秒、ぼくは白鳥たちとの並走を楽しみました。その後彼らはさらに身を捩り、ぼくから離れていきましたが、こんな経験は都会に住んでいてはできませんよね。白鳥たちは単純にカッコいい。まるで飛行機のようにスマートに、飛び立っていきますよ。

 さて、今日から『心のおもむくままに』(スザンナ・タマーロ)を読み始めました。ぼくはいつも「あとがき」を真っ先に読んでしまうのだけど、そのあとがきの冒頭での引用──「逝ったものがわたしたちの胸にのしかかるのは、おたがいに言わなかったことがあるためなのだ」。これだけで、この小説がぼくの人生の書になるだろうことが知れるような。

 そういえばぼくは、よく母の夢を、去年亡くなった母の夢を見ます。長男の宿命としておばあちゃん子で、二階の両親の部屋にあがるのにためらいを感じていたぼくには、言いたかったこと、言わなかったこと、言えなかったことがたくさんある。だから、逝った母がぼくの胸にのしかかるのかも。

みぞるるや兄のねむれる忠霊塔

句集『日照草』(高橋零)所収

(2007.11.25)

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