パレスチナの行方

 過日の河北新報社説が指摘するように、中東情勢が泥沼化した原因は、シャロン・イスラエル首相の政治信念である武力信奉にあります。

和平交渉について首相は「打ちのめし」「多大の損害を与えた後で」イスラエル側の条件をのませる方針だと言明している。この状態が続く限り中東和平への道は開けそうもない。

「河北新報」社説、3月8日付


 イスラエルによる「報復」は無差別の様相を呈し、一般市民や救急隊員をも殺傷している。パレスチナ過激派のテロ行為を擁護するつもりは毛頭ないが、侵略者に対する抵抗は、歴史の常識でしょう。すべての前提は、被侵略者の屈服ではなく、侵略者の撤退なのです。

「今や絶望的な状況」と言われるパレスチナに、光はささないのでしょうか? わずかに希望があるとすれば、イスラエルの若者に、征服者として兵役につくことを拒絶する空気が出てきたこと。パレスチナの中にも、「大義」より現実的な妥協で和平を探ろうとする人びとがいること。サウジアラビアのアブドラ皇太子による調停案に興味を示す国々があること。そしてさしものアメリカも、「パレスチナに宣戦布告して何かが導かれるとは思えない」(パウエル国務長官)としてシャロン首相に強硬路線の再検討を求め、自国の中東政策を軌道修正する兆しが見えてきたことでしょう。

 とはいえ、希望のともしびは小さく、はかない。第三者、特にイスラエルに影響力を持つ──事実は、アメリカにイスラエルが強い影響力を持っている、というべきか──アメリカ政府に全力を挙げて調停に入ってもらいたいのだけれど、報復を正義と言いくるめ、イスラエルによる大量破壊・大量殺戮にお墨付きを与えてしまったアメリカに、何が期待できる?(2002.03.11)

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