「ことば」の課外授業

 西江(雅之)先生の新著を待ってる人って、結構いるんじゃないかな。とにかく面白いもの。目からウロコってやつです。

 この4月に出た新書版『「ことば」の課外授業』(洋泉社)。聞き慣れた懐かしい話も多かったけれど、なるほど「平明かつ高度」、妙に固まってしまっているぼくらの(根拠のない)常識を、いともあっさりと覆してくれます。それが心地よい。

 たとえば、日本語には色を表す単語がたくさんあって、それは日本人の繊細さの現れだ、みたいな話をよく聞くでしょ? なかなか説得力がある。

 でも違うんだなぁ。っていうか、西江先生は例を挙げながらこうおっしゃるんです。「これはたまたまある種の単語をある言語からとって挙げたからそう見えるだけであって、その同じ言語から別の単語を挙げたら話は違ってきますよ。こうしたことは別に日本語のすばらしさでも何でもなくて、言語というのは、すべてそういう性質を持っているんですよ」。

 言葉を取っ掛かりにして文化を語ることは決して間違いではないけれど、「多くの人が言語と文化の直結論をこえて、自国の文化独自論、または自分が属している集団の文化優越論までいってしまう」という指摘は、耳に痛いんじゃありませんか?(2003.05.08)

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