わが家の家電元年
16日のテレビ番組(NHK)「プロジェクトX」を見て、わが家(実家)の家電元年を思い出しました。今回の番組の主役は洗濯機だったけど、そうだ、ウチだって昔は、小学校の低学年頃までは、ろくに電化製品なんてなかったぞ。ラジオくらいなもので。
昔話の「桃太郎」は、「おばあさんは川へ洗濯に……」で始まります。我が家だって同じ。鶴岡市のやや外れにあった実家の裏は一面の田圃で、幅の狭い農道を少し行くと小さな川が流れていて、母や祖母はその小川で洗濯物を洗ってたんだっけ。昭和30年代のお話です。
そして冬になるとね、さすがに小川は雪に埋もれて使えないから、これは歩いて十数分くらいのところにある、お湯の出る洗濯場のようなところに行って洗い物をしたものです。このことをぼくが覚えているのは、洗濯物を運ぶお手伝いをしたからなんですね。偉いゾ、坊や。
洗濯機という便利なものがあるという話が何度か家庭の話題に上っても、それでもなかなか購入にいたらなかったのは、当時の感覚としては便利は贅沢、便利は罪悪だったからでしょう。祖母はもちろん、一番恩恵を浴するはずの母も(どんなに共稼ぎで疲れていても)ラクを求めることにはふんぎりがつかなかったのかもしれません。ヨメの弱い立場だけではなかったはずです。
結局わが家の家電元年は、他の家庭と比べてもやや遅く、母の苦労をみかねた(都会に住む)親戚からのプレゼントで始まりました。記憶力の乏しいぼくの脳裏にさえ焼き付いている白い洗濯機。自分が使うわけじゃないんだけど、よっぽど嬉しかったんでしょうね。忘れられません。今と昔とでは、家庭に入ってくる一つ一つの家電製品の重みが、とんでもなく違っていましたね。(2002.07.17)