愛の旅人
先週の朝日新聞「be on Saturday」。あれ? と思いました。シリーズ「愛の旅人」に近藤善文監督作品「耳をすませば」が。ジブリとしては小ぶりなこのアニメがこんなに大きく取り上げられるなんて。しかしよくよく考えてみればこの作品、95年の邦画収入第1位の作品ではあったのです。
「ファンのサイトに『聖蹟桜ヶ丘に行った』という書き込みが、公開から11年たっても見受けられる」というほど、静かな人気をいまだ保っている「耳をすませば」。ぼくも好きだなぁ。マイ・ベストの「紅の豚」が洒脱なら、「耳をすませば」はナイーブ。大仰な物言いなんて一切ない。
等身大を思わせながらじつは彼方にある若い二人。そして彼らを包む不思議な大人たち。どこにでもありそうな、だけどめったになさそうな、天空の視界を持つ街。ギリシャ神話っぽい世界かも知れないな。素朴な歌いっぷりの「カントリーロード」も心地よくってね。干天に慈雨って感じで、染み入ります。
近藤監督は47歳で亡くなられたそうです。時に繊細すぎる! とさえ感じさせる描写は、早すぎる死を予感させるものがあるような気がします。(2006.08.29)