「藤沢周平の世界」を楽しみに
「藤沢周平の世界」の配本を毎週楽しみにしています。
あらすじの紹介や情景をよく醸し出す写真もさることながら、とりわけ良いと思うのが優れた読み手によるエッセー(「○○が読む」)。ぼくは、藤沢さんの作品はとにかく実際に(できれば)繰り返し読むのが一番で、下手な解説は不要と思っているけれど、このシリーズについては味読・熟読していますよ。
たとえば「09」号ではあさのあつこさん。ぼくは知らないけれど、そういえば娘が読んでいたな、という作家。彼女の文章はアツかった。
藤沢作品が好きで、好きで、読み続け、読み直し、読み漁り、いつの間にかその大半を読み尽くしていることに気がついたとき、私は少なからず慌てた。……すべての作品を読んでしまったら、もう後がないじゃないの……。
『風の果て』はそんな貴重な読み残しの一冊。読み終えてのち、あさのさんは「幸福」を実感します。
それにしても……と、わたしは目を開け、考える。とうとう『風の果て』を読んでしまったんだ。満たされながら切ない。また涙が出そうになる。そのくせ、心身に力が宿っている。読む前よりずっと強く宿っている。
これは批評や分析の類いではありません。彼女のこころの共鳴であり、それはまたぼくたち自身のそれでもあり、だからうれしいのです。
あ、あああ〜。今日はBSの寅さんまでもが終わってしまった。もう後がない。切ない……。(2007.01.27)