人生は廻る輪のように

 文庫本になったのを機会に買い求め、いまちょうど三分の二くらいを読み終えたところです。エリザベス・キューブラー・ロス『人生は廻る輪のように』(上野圭一訳、角川文庫)。

 名著『死ぬ瞬間』を読まずにいきなりこの本に接する人は翻弄されるかもしれませんね。もう何十人分もの人生が彼女一人のそれに凝縮されて世界中を駆け巡り、強い意志、強固な信念が此岸と彼岸を往来する。

 医療関係者ではないぼくは、多くの場合思想書として彼女の本を読みます。たとえば彼女は、ナチスの収容所からかろうじて生還した一人のユダヤ人女性・ゴルダの言葉として次のように記すのです。

「ヒトラーと同じだわ」とゴルダがいった。「せっかく救われたいのちを、憎しみのたねをまきちらすことだけに使ったとしたら、わたしもヒトラーと変わらなくなる。憎しみの輪をひろげようとする哀れな犠牲者のひとりになるだけ。平和への道を探すためには、過去は過去へ返すしかないのよ」(124〜125頁)

エリザベス・キューブラー・ロス『人生は廻る輪のように』

 憎しみをのみエネルギーとしているかのような多くの人々に、この言葉を伝えたい。(2003.08.26)

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