図書室にて

 娘の受験に付き添い、ある看護学校に行って来ました。父兄の待合室は特に用意されていなかったものの、職員から図書室での待機を許され、父兄は看護・医療関係の書籍に囲まれて数時間を過ごすことに。

 図書の閲覧も自由。持参の書物も読み終えてしまったし、何か面白そうな本はないかな。……手に取ったのは、看護学生たちの卒業論文集。なかなかの力作揃いです。

 時代を反映したものか、昨年の文集には終末期看護をテーマにした論文が多かったようですね。専門用語も多いけど、そこはそれ、いちおうは看護婦の夫。耳学問で少しは馴染みがありますから、読むことぐらいは出来ます。ぼくは初めて聞く名前だったのだけど、キューブラー・ロスという精神科医の『死ぬ瞬間』がおおく取り上げられていて、興味を持ちました。

 調べてみると、この本は今では文庫に収められています。さっそく近所の本屋さんでget、読み始めました。これはもう、死をめぐる思索の書であり、哲学書ですね。

人間の集団というものは、暴力団から国民全体にいたるまで、それぞれ集団のアイデンティティを利用して他の集団を攻撃・破壊するが、これは破壊される恐怖の裏返しの表現である。

キューブラー・ロス『死ぬ瞬間』、中公文庫、30頁

人間は、死の恐怖が増大したことや、死を予測して自分の身を守る能力が低下したことに対して、あらゆる手段を動員して心理的に自衛しなければならなくなった。

同前書、31頁

 ね? 1969年に出版された本とはいえ、その内容は今日的であり、かつ普遍的です。(2002.02.05)

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